JAM SESSION
STAGE 6

●下垣
 確かに背景との一体性は重要だけれど, 優れたものや受け止める側の感受性が鋭ければ, ある感動は得られると思うし, それがきっかけになって, その音楽が生まれた背景を知りたくなって, それを知ったり体験したときの感動に繋がる, ということもあると思います. 私は今大同工業大学でドイツ語を教えているのだけれど, ベートーベンの第 9 が生まれた背景なんかを学生に話しをします. そうすると彼らはとても興味を持つ. そういった興味で, 実際にドイツまで行ったりというような行動が引き起こされると, 本当の感動に出会えるんじゃないかな.

●佐々木
 なるほど. 感動は行動がもたらす, というわけですね. そして情報はそのきっかけとなる.

 

■ 万博へのエネルギー ■

  ●佐々木
 下垣さんはハノーバー万博の閉会式で, 日本の歌をうたわれましたよね. 「じゃぽねすく」 という CD に入っている曲がそうですね.

●下垣
 次回の万博の開催国, 日本として, 日本人の心を伝えたい, という企画で, ドイツ語で解説しながら日本の歌を日本語で歌いました. 音楽は国境を越えるというのは本当で, 終わったあともアメリカ人のおじさんたちがよかったよかったと凄く喜んでくれたりしました.

●佐々木
 博覧会には私も以前かなりディープにかかわったけれども, 今はどうも…. 大丈夫かなあという気がしています.

●下垣
 そうね. 開幕できるでしょうかね. でも私がなんで万博にかかわっているかというと, 万博にはやはりものすごく大きな人のエネルギーが注がれていて, それがやってくるということは地域にすごく刺激になると思うからです. 特に子ども達に世界的な人たちの様々エネルギーを感じてもらいたいし, そうしたすばらしい経験や感動を体験できると思います. やはり風がおきなければものごとはすすまないし, 万博にそれを期待したいなと.

 




●佐々木
 確かに万博のプリミティブな目的はそこにありますよね. これまでもすごくいろいろなエネルギーが注がれてきたはずだし, 今もいろいろあるとは思うけれど, それがどんどんブラックホールに吸い込まれていくような気がしてしまうのよね. 今でも一生懸命やっている人には悪いけれど.

●下垣
 そうかもしれない. いろんなエネルギーをうまく燃やす時間がないまま不完全燃焼してしまって, 万博をやろうとしていた昔の頃はもっと発散してたのに. 今も博覧会にドイツの南バイエルンの宗教音楽を紹介するという企画の話があるのだけれど, 受難劇みたいな宗教音楽は, 私は向こうでは歌っていたけれど, 日本では合わないんじゃないかなとおもう. つまり, 風土や環境と一体になって理解できるものだから, 日本で, しかも万博というお祭りの場ではどうかなあと, 個人的にはおもっているの. せっかくの機会だからとは思うけれど, 直感的に不安があると正直に言ってしまうのよね.

●佐々木
 やはり, 感覚的, 直感的に引っかかるものは, どこか問題があるんじゃないかと私も思う. 私もそういうときは, すぐそれを口に出しちゃうから, あちこち迷惑がかかるんだけれどね. でも言わないと後で後悔することが多いでしょ.

●下垣
 佐々木さんがいると会議なんかも紛糾して大変だものね (笑い).

●佐々木
 ご一緒した名古屋市の都市景観賞のときでしょう?でもやっぱり変なものは変よね.

●下垣
 いろいろ大変なこともあるけれど, これからもお互い感性と直感を大事にいしていきましょうね.

●佐々木
 本当に. 今日はどうもありがとうございました.

 

お話を伺って一言:
なんだか壇ふみと阿川佐和子のおしゃべりのような…(二人とももう少し若いけれど). 天真爛漫な二人は人生をもっと楽しむためにひたすらポジティブに行こう!と意気投合?でも下垣さんのそのエネルギーの源には日本という国に対する強い愛があるなあ…と再認識しました. (佐々木)

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