4-2 政治的・経済的・行政的な面からみて
@ 社会主義国家と市場経済導入のジレンマ
ベトナム主導の社会主義国家であるが、経済的には市場経済を導入せざるを得ないため、国全体に貧富の格差が拡大しつつある。貨幣経済の浸透に伴って、村人の意識も変わりつつある。数年前にある村で開催した土地利用ワークショップで、参加者の一人はこう言った。「昔は土地が金になるとは思いもしなかった。しかし、今は違う。」と。
A 地方自治体の人材不足
地方自治体における人材不足は著しい。農林業分野においても、年間予算すら立てられない郡も少なくない。そのため、海外からの援助プロジェクトが実施されても、その技術がラオス側に移転されないため、次の内発的な発展につながらない。また、公務員の給料は著しく低く、生活を時間外の収入に頼っているため、仕事に対するインセンティブが弱い。

写真3 チガヤの繁茂した焼畑跡地 |
 
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B 戦乱による村落移動と伝統的しくみの崩壊
ラオス中北部ではベトナム戦争時代に激しい戦乱に見舞われ、多くの村人があちこち逃げ回っていた。筆者の調査では、ある郡内の2/3近くの村落が過去20年間に成立している。そのため、伝統的な森林資源の保全と利用のしくみが崩壊、あるいは再定着せず、ややもすると過度の森林利用に傾きがちである。
4-3 社会的な面からみて
@ 教育レベルの低さと内発的開発の困難さ
人口増加に対応するだけの教育資源整備ができず、山間地域では小学校2年間しか修学できないケースが多い。村長を中心とした村落委員会やラオス女性同盟はそれなりに活動をしているが、地域社会全体として内発的な活動が展開されるためには、外部の支援が必要とされ、特に中地ラオ族では、生活改善のためのモティベーションが高まりにくい。
A 生活設計を描けないくらし
焼畑農民は天候に依存しており、安定した現金収入が得られない状況下では、中長期的な生活設計にまで思いが向けられない。そのため、長期的な視点が重要な森林保全に対してはどうしても意識が弱くなりがちである。
(続く) 
写真4 伝統楽器を弾く |