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3. 調査研究の主な成果 最後に, 今回の調査研究の成果のポイントについて概述しておく. 主要な成果は, 北京市区の市民生活の情報化の進展状況や生活へのインパクトの実態についての実証的デ−タを現地調査を通じて得るという調査研究の当初の目的を達成できた点にある. 今回のアンケート調査の範囲ではあるが, 北京市区の市民生活において情報化が進展しつつあることや情報通信サ−ビス利用への潜在的ニーズも高いことが実証的に明らかになった. ちなみに潜在的ニーズを含め情報通信サ−ビスへのニ−ズを持つ回答者は, 移動電話で約 8 割, インタ−ネットで約 7 割に達している. また, 情報通信サ−ビスの普及の主な阻害要因については, 日本の場合と同様に費用面であることも明らかになったが, 費用面で興味深い点は, 情報通信サ−ビスを利用している北京市民の情報通信サ−ビス利用への対価の収入に対する比率が日本と比べてかなり高いという点である. 今回の聞き取り調査を行う中で, 中国においては留守番電話やファクシミリはあまり利用されない, インタ−ネット利用の最大の理由はニュ−ス情報にある, というような指摘があったが, そのような指摘が示唆するように, 移動電話やインタ−ネットの利用ニーズについては単に表面的な数値だけではなく, 中国社会のコミュニケーションの仕方や関心情報などの社会的文化的な要因と深く関わっている点に留意する必要があるといえよう. 上述した以外にも, 今回得られた実証的デ−タに基づく日本と中国の国民生活の情報化の比較より, 両国における国民生活の情報化の類似点や社会的文化的背景の違いを反映していると推察される相違点をいくつか把握することができた. 今回の調査研究のもう一つの成果として, 聞き取り調査を通じて中国における国家情報化の契機とそ |
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の意図を確認することができたと同時に情報化戦略を巡る政府や企業の最前線の動きの一端を把握する ことができた点も挙げられる. 特に国家情報化の契機とその意図については, 中国における情報化への国家的な取組みの契機がアルビン・トフラ−の 『第 3 の波』 の衝撃であったこと, 国家情報化への動きは 『改革・開放』 政策の開始後の 1980 年代まで遡ること, 国家情報化の意図は先進諸国と同じレベルから競争可能な分野であったことなど, 事前の文献調査では知り得なかった貴重な背景情報を知ることができた. そして, 工業化も発展途上段階でのこのような国家情報化の展開は, 先進諸国とは異なる新しい国家発展のシナリオ (モデル) の可能性の追求という面からも興味深い. また, 情報化戦略を巡る政府や企業の最前線の動きから, 中国における国家情報化の展開の中で市場経済の競争原理が導入されつつあることを知ることができた. 競争企業の政策的設立や競争が激しいベンチャ−企業活動などにそのような動きが見られる. しかしその一方でインタ−ネットに対する管理と規制の強化の動きや情報格差などが懸念されているのも事実である. 現在の中国社会は, 国家情報化への本格的な取組みが始まって約 10 年が経過し, いくつかの課題を抱えながら新 5 か年計画のもとさらなる国家情報化に向けた新たな段階を迎えたところといえよう.
杜総経理(社長),劉教授,近藤,由氏 |
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