愛知県の小牧山で発生したスギ大量枯死の原因
−新聞の科学記事にはご注意を−

情報社会科学部講師 福田秀志 (農学博士)


1.はじめに
 1997 年5 月に,愛知県小牧市の国指定史跡・小牧山にある杉並木で,スギが多数枯死していることが新聞紙上で報道された(図1).それによると,枯れた木からオナガキバチというハチの仲間が多数発生しており,このハチの加害がスギ枯死の原因であるとされていた.キバチの多くの種類は,体内に植物病原菌を持っており,木を枯らす場合があることが知られている.しかしながら,このオナガキバチは植物病原菌を持っておらず,弱ったり,枯れたりした木の中で生活していることが分かっている.そのため,筆者はこの原因の特定に疑問を抱いた.
その後,愛知県と小牧市からこの樹木枯死に関する調査依頼があったため,筆者らは,この原因を明らかにするために1997 年と1998 年の2 年間現地調査を行った.その結果,スギ枯死の原因を特定できたので報告する.
 報告を行うにあたり,現地調査にご協力いただいた小牧市緑地管理協会の落合利勝氏,江口秀和氏,愛知県林業センターの吉田和弘氏および名古屋大学農学部森林保護学研究室の方々に感謝する.なお,本報告は,樹木医学研究に掲載された論文を改変したものである.

図1 小牧山で発生したスギ大量枯死を報じた新聞記事(1997年5月30 日朝日新聞朝刊).
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