NHK が半田キャンパスで立体視機能調査

〜情報社会科学部生 258 名が協力〜


6 月中の火曜日・水曜日を中心とした 10 日間にわたって, 日本放送 協会 (NHK) 放送技術研究所ヒューマンサイエンス部から 2 名の研究員が本学に出張し, 学生の視機能調 査を行ないました. 本学側の研究協力者である鵜飼一彦教授を通じて情報社会科学部・情報社会システム 研究所に協力依頼があったもので, 当研究所では共同研究室を提供するなどの便宜を図りました.  現在, 新しい映像表現の手段として, 立体映像装置が開発されており, 今後の普及が期待されていま す. この場合, 立体視に固有の性質, すなわち, 両眼融合機能の限界は立体映像 (再生範囲) の設計上の みならず, 視覚衛生 (視覚負担, 疲労, 生理的影響など) 上の課題からも, きわめて重要な特性です. 一方, この特性は個人差が大きいことが経験的に知られています. 今回の調査では, 同一年齢層の多人数 を対象とし, 両眼融合限界の統計的な数値 (人口分布) を明らかにすることを目的としています. 対象者 は本学学生とし, 年齢層のみを限定し, それ以外の機能で選択せず無作為としました. 測定項目は静的な 両眼融合限界 (近いところ, 遠いところにあるものを両眼を寄せたり開いたりして一つに見る機能の限界) およびそれに付随する両眼視機能です. 測定には, SGI 製のグラフィックワークステーションに接続され た, メガネなしで両眼別々の画像が見られる特殊なディスプレイ (レンチキュラー方式) が 2 セット使用 され, 学生は 10 分強の測定時間内に, 提示された視標が画面位置よりも飛び出して見えるか, へこんで 見えるか, あるいは二つに見えるかをマウスで答えました.
藤井保憲情報社会科学部長も" 飛び入り" 参加


学内の多数の協力を得て, 結果的に, 10 日間で 258 名の本学学生のデータが得られました. 最終的に は東京近辺の 2 大学で女子を中心にした数十名の測定結果をこれに追加し, 男女比のバランスのとれた, 300名規模のデータとなりました. このデータは, 日本人大学生の立体視機能の個人差の分布の標準デー タとして, 今後立体映像の技術を広めていくための基礎となり, 様々な場面で利用され, 技術の進展に役 立つことと期待されます. データの内容は予測通り個人差が大きく, 個人差の範囲や付随して測定した眼 機能・立体視機能との間の相関に興味が持たれるところです.
また, 参加した学生の反応も 「最新の技術にふれることができて面白かった」 「若干目が疲れたが標準の データに含まれることになってうれしい」 などの好意的なものが多くみられました. 「立体放送が始まるの か」 などという反応 (実は近い将来に放送として行なわれることはありませんが放送以外ではすでに広く使 われ始めています) も多く, 中には鋭い技術的な質問や人間の機能に関する質問, NHK 内の人事機構に関 する質問を発する学生もいました. また, 立体視が弱い, 斜視といわれたことがある, 目が疲れやす い, などの個人的経験に基づく相談を始める学生もいて, 鵜飼教授を含めて 3 名で対応しました.  学生の担当教員からも, 学生に対してよい刺激になるだろう, との理解をえ, また, NHK 側からも学 生の態度等に良い評価をいただき, 関係者すべてにとって成果が得られた調査プロジェクトでした.
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