ふくしで活躍する卒業生voice戸枝陽基さん

福祉は実学、現場実践が何より大事です

NPO法人ふわり・社会福祉法人むそう 理事長
日本福祉大学 客員教授

戸枝陽基さん

社会福祉学部第1部 1991年3月卒業
群馬県/太田東高等学校

仕事のやりがいは何ですか。

 私は、障害のある母をもち、7人の兄弟がいる子だくさん家庭なのに、父は私が中学生のときに結核で入院して隔離され、生活保護を受けながら生きるという環境で育ちました。福祉が、私やその家族の生きにくさをしっかり助けてはくれなかったという思いが強くあって、自分で経営者になり、理想的な福祉事業の創造をめざしました。
 今は、「医療的ケア児」という生まれながらに医療依存度の高い子どもが、この15年ほどの新生児医療の発達により救命され、現在2万人も生きているのに社会支援が整っていないという問題を、事業所で支援策を実践的に構築しながら、行政・メディアなどに発信して解決しようとしています。子どもたちの成長と社会支援システムの充実を実感することが喜びです。

仕事の現場で、「ふくし」をどうとらえていますか。

 「ふくし」って、誰かを幸せにすること。生きにくさを抱えた人と出会い、その解決のために必要であれば、仕事と割り切らず、でも、専門家としてのプライドは強くもって、とことん寄り添う。子どもの頃の私は、そういう大人と出会いたいと思っていました。
 「ああ、今、生きていて幸せだ」って思ってもらうまで、その人の手を離さない。誰かの温もりがある限り、人は死なない。一緒に涙を流すことは私にもできると思っています。

現在の仕事への就職に向けて、学生時代に取り組まれたことは何ですか。

 私は、自分で福祉事業を経営したいと学生時代から思っていました。経営は生き物。ケーススタディをたくさんした方がいいと考え、アルバイトを深くやりました。特にそこの社長さん、マネージャークラスの人々とプライベートでも付き合い、多くを学びました。

大学時代の学びは、現在どのように活かされていますか。

 福祉は実学、現場実践が何より大事だと思います。施設でアルバイトをして学んだこと、障害学生と友人として向き合って感じたこと、実習での疑問などを講義や図書館で理論化する。友人や先輩たちと議論して、聞く力や伝える力をつけたことも、今、組織や社会的事業を動かす大きな基礎になっていると思います。

*所属・掲載内容は2020年2月現在