はじめてのふくし21版
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3地域共生社会の実現に向けて今、日本では地域共生社会をめざした改革が進められています。これは共生社会を基本としながら、支える側と支えられる側が分けられることなく、あらゆる人たちが役割をもって、お互いに支え合いながら豊かに生きていくことができる地域をつくろうという考え方です。このことを、ケアリングコミュニティといいます。ケアリングコミュニティでは、誰ひとり地域から排除されることなく、お互いによりよく生きようという「相互実現」の考え方が大切にされます。自分らしくとか、個性を大切にといった自己実現を越えて、お互いの弱さを含めた存在を認め合い、相互によりよく生きようというのが、相互実現です。人は一人だけではなく、相互の関係性のなかで、その人の存在が輝いていくのです。一人ひとりが役割を持てること。それは自己肯定感や自尊心につながります。しかし誰いて、それができにくい状況であるときもがそれができるわけではありません。何かに躓に、その人に寄り添うことができる「伴走型支援」が必要になるのです。地域共生社会とは、みんなが強くなれる世界をめざすのではなく、一人ひとりの人間の弱さを含めて認め合い、みんなで対等に支え合うことができる社会のことをいいます。現代社会でケアリングコミュニティが求められてきたのは、それだけ「社会的孤立」が深刻化してきたからともいえます。日本では、この数10年の間に、家族機能が低下したり、地域で支えあう機能が無くなったり、会社でも非正規雇用が進むなど、「つながり」が希薄になってきました。ただし昔のようなつながりは封建的であったり、抑圧的なものであったりして、必ずしも個人の自由や多様性が認められたものではありませんでした。今、私たちは地域共生社会として、新しい「つながり」をつくっていくことが求められています。そして、それは人と人との関係だけではなく、社会のあり方を変えていこうという挑戦です。具体的には、縦割りの社会福祉の枠組みを、地域というコミュニティのなかで再編したり、誰一人取り残さないためのセーフティネットを作り直そうという試みです。そのためには社会福祉法を改正して、市町村ごとに包括的支援体制を構築していくことになりました。地域共生社会を実現していくためには、私たち一人ひとりの意識や活動だけではなく、従来の社会福祉の制度やシステム、現場の実践も変えていく、つまりイノベーション(改革)をしていくことが求められています。まさに「ふくしの総合大学」である日本福祉大学が挑戦しているテーマそのものです。つまづ38© 2004 Nihon Fukushi Universityケアリングコミュニティ地域共生社会

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