はじめてのふくし21版
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6路上生活者(ホームレス)をどのように見ていますか?ホームレスはなまけものですか。不潔な人ですか。かわいそうな人でしょうか。みなさんは、どんな目でホームレスを見ていますか。厚生労働省の調査(2022年)によると、全国のホームレス数は3,448人。大都市圏に多く、約25%の人たちが市街地の公園で、約24%が河川で生活し、廃品回収などで収入を得ています。また、最近では、「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者の増加や、外国人難民のホームレス化が社会問題になっています。日本のGDP(国内総生産)は世界で第3位(2021年)で、周囲の国々から日本は経済大国であるとみられています。そのような国で、なぜ住む家のない人たちが生まれるのでしょうか。湯浅誠さんは、著書『反貧困』の中で、日本の社会を「すべり台社会」と呼んでいます。すべり台のように、「うっかり足を滑らせたら、どこにも引っかかることなく、最後まで滑り落ちてしまう」社会だというのです。(湯浅誠『反貧困』岩波新書、2008、30ページ)厚生労働省の調査によると、日本ではいま、働いている人の36.7%が非正規雇用(パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など)の立場に置かれています(2021年の実態)。非正規雇用の人たちは、契約の期間が終わると、仕事を失うことになります。また、企業の業績が悪化した時には、正規雇用の人に比べて解雇される可能性の高い立場に置かれています。失業に備えて雇用保険という制度があります。保険の適用範囲拡大の動きもありますが非正規雇用の人は保険に入っていないことが多く、雇用保険を受けることができないことが多くあります。また、収入のない人が受けることのできる生活保護は、「働く能力がある」という理由で、なかなか受けることができません。このように、困った人がどん底まで落ちないようにと用意されているはずのセーフティネット(安全網)が、非正規雇用の人には役に立たないことがあり、網の目から落ちてしまうことがあります。網の目から落ちた人の一部が、ホームレスという状態になって私たちの目の前に現れていますが、「すべり台社会」にいるだれもが滑り落ちる可能性をもっているといえます。ホームレスの問題を解決するには、私たちの社会のしくみから考え直す必要があります。32© 2004 Nihon Fukushi University10(p.33)なぜ、滑り落ちてしまうの?

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