はじめてのふくし21版
32/68

5若者や家族を大切にする社会にするには?国際的な金融危機、新型コロナウイルス感染症、超スマート社会の到来などにより、貧困や格差が広がり、子育てが困難である状況は改善されていません。日本でも正規雇用や終身雇用制度などが見直され、20代から30代の若者の約3分の1が派遣や非正規雇用で働くことになってしまいました。以前からフリーターやニート(15~34歳の働いていない人のうち、家事も通学もしていない人)が社会問題になっていましたが、これらはより深刻化しています。また、この世代の正規雇用の仕事負担は大きく、仕事と家事や子育てなどをバランスよく成り立たせていくワーク・ライフ・バランスに困難が生じています。厚生労働省と文部科学省は、2020年12月から2021年1月にかけて初めて「ヤングケアラー」の実態調査を実施しました。その結果、家族の世話や介護などに追われる「ヤングケアラー」は中学生では約17人に1人(5.7%)いることがわかりました。彼らの67.7%が、誰にも相談したことがないと答えています。このように、結婚し、子どもを産み育て、幸せな家庭を築くことができる社会だとはいいがたい状況であることがわかります。政府は、少子化対策として数多くの子育て支援政策を推進してきました。エンゼルプラン(1995~1999年)にはじまり、新エンゼルプラン(2000~2004年)へと引き継がれました。少子化対策基本法・次世代育成支援対策推進法(2003年)が制定され、「子ども・子育て応援プラン」(2005~2009年)、「子ども・子育てビジョン」(2010~2014年)と5年ごとに少子化対策が打ち出されてきました。しかし、少子化に歯止めはかかっていません。2015年4月からは「子ども・子育て支援新制度」がスタートしています。また、2023年4月に子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」が発足しました。妊産婦・乳幼児等へは、「子育て世代包括支援センター」において母子保健分野と子育て支援分野の両面から支援が実施されています。具体的には、母子保健法に基づく母子保健事業、子ども子育て支援法に基づく利用者支援事業、児童福祉法に基づく子育て支援事業などです。安心して妊娠・出産・子育てができる「地域づくり」もセンターの重要な役割の1つです。「地域子育て支援拠点事業所」など、地域の子育て支援事業等を提供している関係機関との連絡調整、連携、協働の体制作りを行うとともに、地域の子育て資源の育成、地域課題の発見・共有、地域で必要な子育て資源の開発等に努めています。30

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る