はじめてのふくし21版
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2「ふくし」の広がり50歳から100歳の地域包括ケア地域にはいろいろな人たちが住んでいます。赤ちゃんも、子どもたちも、若者や壮年(40代、50代)、お年寄り、障害のある人、国籍や民族、性的指向、宗教や思想の違う人たちも暮らしています。それぞれ立場や意見の違う人たちが、お互いのことを認め合い、多様な生き方があることを尊重するというダイバーシティの考え方にもとづき、みんなが助け合って生活ができれば、それは理想的なまちになります。そのときに誰もがふつうの暮らしをしていくことは権利であるというノーマライゼーションの考え方や、誰ひとりとして排除せずに全員を包摂(包み込む)していくというソーシャルインクルージョンの考え方が大事にされています。しかしながら、こうした地域共生社会を実現していくことはとても難しいことです。例えば、私たちの福祉意識には「総論賛成・各論反対」の傾向があるといわれます。「障害のある人たちの人権を大事にしよう」という主張にはみんな賛成をします。ところが自分の家の近くに障害者の福祉施設ができるということになると反対をするのです。そうした差別をなくしていくために「障害者差別解消法」といった法律もできました。合理的配慮をしたり、私たちの福祉意識を高めていくことが大切です。また実際に、地域では様々なニーズの変化も起こっています。1つの家族のなかで、認知症の高齢者、障害のある母親、不登校の児童が暮らしているような場合、それぞれ個人への支援だけではなく家族全体の支援が必要です。あるいは核家族で、子育てをしている夫婦の親が要介護になり、子育てと介護のダブルケアが必要になっている家族もあります。地域には支援を拒否する人もいます。「自分のことは放っておいてくれ」「自分なんか生きていても仕方ない」とセルフネグレクト(自己放任)の人。近隣の人や専門職は心配していても、本人は「大丈夫、大丈夫」と言って、全く困った実感がない人。いろいろな事情で社会的に孤立している人たちが増えています。こうした人たちを支えていくためには、バラバラな支援ではなく、包括的な支援が必要になっています。みんなが支え合っていきていくためには、生活を支える様々な専門職が協働していくことが不可欠です。このことを「多職種連携」といいます。それができるように大学のときから教育や卒業した後の研修、現場でのカンファレンス(会議)の持ち方、連携がすすむようなシステムが必要です。最近では、こうした組織や機関が連携するために「多機関協働」の仕組みづくりが自治体に求められています。ただし専門職だけが頑張っても、地域全体取り組みにはなりません。先述したように、17© 2004 Nihon Fukushi University多様性を認め合う複雑なニーズに応える多機関協働〜誰もが住みやすい地域づくりをめざして〜

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