はじめてのふくし21版
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5(p.11)4「いきがい」 日本は経済的に豊かな国に数えられながらも、全国の自殺者総数は21,007名、中高年を中心に1日約58名もの人が自殺をしている計算となります。(令和4年3月15日/厚生労働省・警察庁「令和3年中における自殺の状況」) テレビにうつる開発途上国の子どもの瞳は輝いているように見えます。それに比べて日本の子どもは少し疲れた暗い顔をしているように見えるかもしれません。 いま日本では、高齢者も、中高年も、子どもも、日常の生活に満足できていないのでしょうか。一ヶ番康せ瀬こ子が (1)衣食住、保健衛生などの基礎的生活要求 (2)人間関係や職業などの社会的生活要求 (3)遊び、レクリエーション、趣味、学習などの文化的生活要求私たちが満足できていない要求レベルは、(1)よりは(2)、(2)よりは(3)の比重が大きいように思われます。やりたいことができていないということです。自分の生活に満足できていなければどうなるでしょうか。高齢者は、自分の歩んだ人生にふさわしい生き方がしたいと思うかもしれません。中高年は仕事や生活に追われ、家族や友人と過ごす時間がなくなり、疲れ果ててしまうかもしれません。子どもは、楽しいはずの勉強や学校というイメージが持てないまま、いろいろなことがつらくなってしまうかもしれません。これらには、日本の文化のレベルが反映しているともいえます。心のゆとりが失われてしまっているのではないでしょうか。せかせかと目先の利益に向かって走っていて、走ることそのものが目的になってしまっているのではないでしょうか。いきいきしている人たちの多くは、夢を持っています。そして、それを実現するための目標があり、人の輪(ネットワーク)を持っています。人とのつながりは、趣味であったり、スポーツであったり、芸術であったりします。文明より文化、物質より精神の豊かさが、「いきがい」として求められているのです。「いきがい」があるから、「いのち」が輝きを増し、「くらし」の質が高まるのです。すべての人が快適に生きられるまちづくり、物づくり、そして社会の仕組みをつくること。すべての人びとの「いのち」を大切にし「くらし」を豊かにする、「いきがい」を見つけることを支える、それらのすべてが「ふくし」なのです。 さあ、あなたはこれから「ふくし」について何を学びますか……。ばんやすいちさんは、日常生活要求を以下の3つのレベルでとらえています。(一番ヶ瀬康子『福祉文化論』有斐閣、1997)10© 2004 Nihon Fukushi University

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