2008年度学校法人日本福祉大学事業計画

 

1.本学をめぐる環境と重点課題

1.競争環境の新たな展開

 大学をめぐる環境の厳しさはさらに増している。定員割れ大学は昨年に続き4割を超え、地元東海地域では5割、約半数となっている。とりわけ福祉領域は、マスコミの一面的な報道や企業雇用の拡大等の影響により、全国的な志願者の減少に直面している。政府の規制緩和と競争激化の政策の中で毎年10校ほどの大学が新設され、また借地・借家で大学設立が可能となる設置基準の改定等により株式会社立大学や海外大学日本校が参入、国立大学法人の推薦枠の拡大により学生募集の競合も強まっている。第3者評価の義務化と結果公表やCOE、GPなどの競争的な資金獲得競争の拡大、さらには定員割れ大学への補助金減額幅を従来の15%から50%近くに一気に拡大するなど厳しい措置も進められている。競争により大学改革を促進する政策から、はっきり大学淘汰、定員割れ大学の退場を促す政策へ、いっそう踏み込んだ展開が進んでいると見ることが出来る。

昨年度は、学校法人の倒産は一気に7件に拡大し、また、半世紀ぶりに私立大学同士の合併の動きも始まった。「赤字」法人は拡大し、大学で30%、短大では45%となっている。定員割れで、補助金がカットされた法人は、支給対象法人の37%(330校)に上り、定員充足率が50%以下となり補助金が不交付となった大学も20校ある。

 全入状態は、財政悪化に留まらず、学生の学力低下や進路を切り開く力に困難をもたらし、それが大学の教育の特色や強み、就職水準ひいては志願数に影響、経営存立基盤に直結することとなる。

 こうした競争の激化は、大学の明確な特色を基盤とした政策や計画の策定を行い、経営・教学の一致、教職協力を基礎に全学的な力の集中による政策実現の取り組みを求めている。

 

2.21世紀学園ビジョン―学園アイデンティティ確立のために

 このような厳しい時代状況を切り開くため、本学では昨年度「21世紀学園ビジョン」とその具体化(中期構想−2013年まで)、短期計画(−2008年まで)を学内諸機関の議論を経て取りまとめた。要旨は以下の通り。

1)本学園の目指す3つの基本目標

@「人間福祉複合系」学園としてのリーディングセンターの構築、A「生涯学習型ネットワークキャンパス」の展開、B「福祉文化」の創生と全国への普及。

2)基本目標達成のための基盤形成(5つの事業骨格)

@福祉社会をリードできる専門人材の育成、A教育の独自性、優位性(特色)の確立、

B通信・通学融合教育の展開、C地域との共生・共創、D先進的研究拠点形成。

3)目標達成のための学園運営の5つの基本視点

@学生参加と満足度の向上、A説明責任の明確化、B経営・教学の統一、教職員一体の運営、C情報公開と透明性の確保、D経営(財政)の安定化と責任体制の構築。

3.2008年度学園重点課題

−6学部9学科を軸とした改革推進、新生日本福祉大学の社会的評価の浸透を−

 2007年度は21世紀学園ビジョンの実現に向かって、短期計画に定められた学部の新増設、再編計画に取り組んできた。折からLEC大学の不正申請を契機に厳しさを増した許認可行政の中、全国的にも例がない3学部の同時申請を、戦略本部や企画委員会、各設置準備室を先頭に全学的な支援の中、認可を得ることが出来たことは評価できる。教育課程や教員人事の編成、各課程申請、施設建設や備品・図書の整備、寄付行為認可など開設準備に当たられたすべての教職員の努力の成果といえる。しかし、肝心なのはこの計画に基づく新学部を含む充実した教育の展開、改革により大学全体の評価を高め、志願者を増やし入学生を確保することにある。新設学部、既設学部改革を通し、「学園ビジョン」の示す目標の実現に向けた全学的な取り組みが求められる。本年度の最大のテーマは、厳しい逆風の中、6学部9学科を軸とした改革を定着させるとともに、教育の成果をあげ、広がりを持つ日本の「ふくし」領域の人材育成を担う新生日本福祉大学の姿を、あらゆる機会を通じて社会、高校、企業に浸透させ、評価を向上させるために全学的な力を集中させることにある。

 そうした目標を達成するためにも、教育改革の分野では、昨年の「全学教育開発機構」「学生生活総合支援機構」の立ち上げを基礎に、現在、学部再編と合わせ取り組まれているゼミ改革、教養教育改革、語学教育改革、実習教育改革やFD・教育力強化等の諸改革を完成させ、全体として成果を上げることが求められる。ICT活用による通信・通学融合教育システムの開発など、本学教育ミッションにふさわしいユニークで実効性ある教育内容、形態の開発に引き続き取り組む。また、就職分野でも、公務員・教員分野の就職実績の抜本的向上を始めとして、進路決定率のいっそうの向上を目指す。通信教育事業では、引き続き学生の安定的な確保を目指すとともに、団塊世代や新たな資格(介護、教職等)をはじめとする新領域への対応プログラムの開発をすすめる。

 厳しい学募状況の中、新設学部の魅力をさらに浸透させ、接触者の拡大と志願への結合の取り組みを強化する。学園広報、パブリシィティの強化を始め、本学教育の魅力の発信と特色の強化のために、学内のすべての機関が集中した取り組みを行うことが求められる。さらに、地域ブロックセンター(仮称)の開設を契機に、福祉文化創生事業の総合的な取り組みを具体的に展開し、全国型学募事業の強化をはかる。そのための同窓会、後援会等学園支援組織のご協力と連携した活動の強化を進める。

 財政の中期的な見通しは、学生募集状況等から極めて厳しい状況にある。通信をはじめとした収益拡大方策を検討するとともに、部門、事業単位ごとの収支分析に基づく事業の再編、改善方策を明確にする。収支見通しを踏まえた中期的な経営課題・経営政策を明らかにし、部門ごとの財政改善計画、指標の設定を行う。学園事業では、高浜や新たなビジネスチャンスを生かした新規事業の開拓を進めるとともに、既設事業の見直し、再編を進める。専門学校、高校とも生徒募集に全力をあげるとともに、教育の特色化の一層の推進、可能な新規事業の開拓や事業再編を進める。

 これらの推進を支えうる経営・管理運営・事務局体制を2009年度に向けて整備する。

2.重点事業計画

(新長期計画)

○ 「21世紀学園ビジョンの具体化―創立60周年に向けてー」を構想の基礎としつつ、今後における社会経済状況等の変動を見据えながら、短期計画事業の進展とその中間的な総括に基づき、2009年度から創立60周年にあたる2013年度までの5年間の新長期計画「中期計画」を検討・策定する。

  また、中期計画事業推進のための中期経営政策の策定や基盤整備の課題に着手する。

○ 新学部・学科の開設を遺漏なく進めると同時に、既設学部改革と全学教育改革を実施する。
平成20(2008)年度学生募集結果をふまえ、新設学部・学科の特色のさらなる強化、訴求ポイントの見直し・改善等必要な課題に直ちに着手する。

○ 通信教育部の卒業生を含む、本学における社会人リカレント教育の高度化を果たすという観点から、大学院の社会福祉学研究科福祉マネジメント専攻と福祉経営・人間環境研究科の統合による新研究科の2009年度開設に向けた届出申請と開設準備を行い、本学における大学院教育の質的高度化と学募力の向上を実現する。
上記観点により、社会福祉学研究科社会福祉学専攻修士課程(通信教育)の新研究科(通信教育)への移行(改組)についても検討・実施する。

 

(大学教育改革)

○ 教育改革の中期ビジョンに依拠してゼミ教育、英語教育など少人数教育の改革を推進するとともに、本学らしい全学教養教育の充実、初年次教育の改革をはかる。2007年度採択の現代GP推進をベースにICTの教育活用、オンデマンド授業等を進め、「構造的教育改革」を着実に推進する。全学、学部・学科、教員の各レベルでのFDを進め「教育力」の向上、実習教育の充実等をはかる。

 

(大学学生支援事業)

○ 学生支援のビジョン策定に着手するとともに支援体制の一層の強化をはかる。最近の学生実態の把握に基づき、とくにメンタル面での支援を強化するとともに、奨学金制度改革や、安全・安心・安定した学生生活を送れる環境整備を進める。正課教育と課外教育との連携をはかり、様々な自主的活動への支援策を強化し、学生間の「学びあい・育ちあい」を支援し育成する。スポーツ教育センターを開設し、この分野における教育の充実、課外活動の支援、地域との連携を推進する。

 

(大学学生募集事業)

○ 6学部9学科の新しい大学像を前面に打出しつつ本学の教育目標とこの間推進してきた教育改革の成果をわかりやすく提示し、安定して入学者を確保できるようにする。学園広報部門と連携した効果的な広報を展開すると同時に、1万人を超える資料請求者やオープンキャンパスなどの直接接触者を大幅に増加させる。特に、開設2年目を迎える新学部・学科の安定した志願者確保をはかる。

 

(大学就職・キャリア開発事業)

○ 「新ふくしキャリア教育」の徹底をはかるとともに、ゼミを含む様々な場でのキャリア支援教育を充実・強化する。全卒業生に占める進路決定者の割合を2007年度実績以上に高めるとともに、各領域別の「優良」企業・事業所と公務員・教員への就職実績を増やす。

 

(大学通信教育部事業)

○ 引き続き、教材のオンデマンド化を推進し、大量定年退職者等のニーズに対応した事業化をはかる。社会福祉士資格要件の変更を視野に入れ、学習・実習指導体制の整備とスクーリングの充実をはかり、学生の安定的な確保を目指す。教職資格、介護資格、看護師資格などへの対応は、条件を見据えて時機を逸しない態勢を準備する。

 

(大学院事業)

○ 社会福祉学研究科福祉マネジメント専攻と福祉経営・人間環境研究科の統合および社会人通信・通学融合の学びの促進を中核とする第三次大学院改革を行う。大学院教育支援プログラムでは、ケースメソッドの導入を核として、実務家教員制度の導入を試行する。研究の後継者養成にも力点をおく。

 

(大学研究事業)

○ 本学の研究戦略の提案に基づき、研究所等の再編を行い、より目的的な研究推進体制を構築する。COEに続き、グローバルCOEの獲得を目指しつつ、南京大学、延世大学との研究関係を発展させる。知多半島総合研究所の位置づけを再検討する。

 

(国際交流事業)

○ より質の高い留学生の確保を目指すため、海外提携校との制度的整備を検討する。また、海外の教育・研究機関と連携した事業の推進をはかる。中長期の国際交流政策について検討する。

 

(専門学校事業)

<中央福祉専門学校>

○ 新たな高度医療人材養成事業として言語聴覚士国家試験受験資格取得のための課程新設(2009年4月)準備を進める。

○ 既存課程については、法改正への対応と学生確保に全力を上げる。また、多様な介護人材養成事業を相当規模で展開・支援する。

○ 新課程を含めた新たな経営枠組みにおける経営基盤を前提とし、とりわけ社会福祉士夜間課程の経営見通しを踏まえ必要な措置をとる。

 

<高浜専門学校>

○ 引き続き教育水準を維持しつつ2009年度末閉校に向けたプロセスを滞りなく進める。

 

(付属高校)

○ 新教育体系(コース制)の目標を確実に実現することを柱に、「青年期一貫教育」を、一層充実・発展させる。

○ 「建学の精神」に立脚した、生徒の「生活全体」の構築の課題に着手する。

○ 「経営指標」を超える生徒数確保に挑戦する。

 

(学園事業・社会連携事業)

○ 全国各地で取り組まれてきた事業を統一的に推進するとともに、学生募集への寄与、地域同窓会と大学後援会との連携を強化するため「地域ブロックセンター(仮称)」の具体的な事業計画を検討し開設する。また通信教育部の資源も活かし、介護をはじめとする福祉人材の養成・研修に関わるプログラムを開発し、全国での展開をめざし、株式会社エヌ・エフ・ユーを含む必要な推進体制の整備をはかる。

○ 現在、取り組まれている学園事業・社会連携事業は、具体的評価(意義・内容・成果・収支等)に基づき見直し、再編を進める。

○ 日本福祉大学高浜専門学校の閉校を控え、高浜市いきいき広場事業とあわせ新たな事業について構想をとりまとめる。

 

(学園広報)

○ 2007年度に策定する学園広報戦略に基づき、安定的かつ有効的な学園広報の推進に努める。パブリシィティを特段に強化するとともに、福祉文化創成事業と一体となった広報展開をはかる。

 

(支援組織)

<大学同窓会>

○ ブロック及び地域同窓会活動のビジョン検討と体制の整備、本部機能の強化をはじめとする大学同窓会改革の推進を支援するとともに、同窓生の生涯学習や在学生との交流・支援など多様な事業を展開する。また広報・情報化の取り組みを強める。

 

<大学後援会>

○ 多様な形態の日本福祉大学セミナーを全国で開催するとともに、法人会員の拡充をはかる。また、きめ細かな会員相互の交流をはかるため、地域役員体制の整備に向け、大学後援会組織のあり方について検討をすすめる。2009年、大学後援会設立20周年に向けて、記念事業の企画・検討を行う。

 

(情報化事業)

○ 2008年度稼動予定の通学用ポータル、卒業生ポータル等のフェーズ2サブシステムの安定稼動をはかり、引き続きfuxiの拡充を軸にnfu.jpシステムの開発を推進する。

○ 引き続き通信・通学共用のオンデマンドコンテンツの開発を推進し、特別プログラムを聴講生・科目等履修生等を含む広範囲の学生対象に配信する。

○ 2007年度採択の現代GP(取組名称「ブレンデッド学習による学生中心の教育改革−ITCを活用したエンカレッジ指導モデルの構築−」)の推進と関連し、コンテンツ開発をすすめ、学習支援システムの機能拡充をはかる。

○ 新学部・学科設置と関連した情報環境整備事業を完了させるとともに、2008年4月から本格稼動する無線LANシステムの安定稼動をはかる。

 

(人事)

○ 職員新人事制度の定着を目指し、運用の安定化とさらなる改善を進める。

○ 新長期計画の学部・学科改組、教育・研究改革を支える教員人事諸制度の整備を進め、管理指標の設定などを含む人件費管理システムを検討し、提案する。

○ 厳しい経営環境における教職員の労働実態把握に基づく総合的な労働環境の整備(健康管理)を推進する。

 

(業務)

○ マネジメントサイクルを前提とした内部統制システムの確立を目指し、監事業務ならびに内部監査を計画的に推進する。2008年度はリスク・マネジメントの体系的な整備と規程・文書管理業務などのコンプライアンス経営基盤の整備をシステム改訂と共に推進する。

 

(財務)

○ 既存事業の収益力の維持・改善、新長期計画諸事業の収益力の精査と財務力(実質流動資産比率)の回復に取り組む。また、収入拡大と経費削減に努めるとともに、予算編成方法の見直しなど経営管理方式の整備をはかる。引き続き情報開示・透明性の確保と財務情報の共有を進める。

 

(長期計画関連・環境整備)

○ 新長期計画・短期計画事業の最終年度として2007年度建設した半田キャンパス「教育実習棟」、美浜キャンパス「子ども発達実習棟」の運用に万全を期すると共に、美浜キャンパス野球場の整備を完了する。

○ 学園の「社会的責任」として「地球環境問題」への取り組みを積極的に推進する。

 

(経営・教学体制)

○ 厳しい環境の中で新長期計画の推進をはかるための経営体制の整備、大学機構の改革をはじめとした管理運営、事務組織の整備を2009年度にむけて段階的に進め、2008年度は6学部9学科の教学運営と全学的機構と新規事業に対応する事務組織を編制する。

○ 2009年度学園経営体制の整備にあわせて実施する役員制度改革を検討し、決定する。

 

3.予算の概要

予算書概表・予算説明 参照

 

以 上