Q7
自分の声が響いて聞こえて不快です。
どうしてでしょうか。

A

 自分の声は、耳の穴を通して聴こえるのと同時に、のどの振動が頭蓋骨を震わせて直接内耳のかたつむり管に伝わることによっても聴いています。
両方から音のバランスが崩れると、声が響いて聞こえたり、いつもと違う声に感じられます。
耳の穴や鼓膜、耳小骨の異常で起こる難聴では外から伝わってくる声が小さく聞こえ、頭蓋骨を介した声が相対的に大きく感じられます。
また耳管の異常では難聴がなくても声が響いて聞こえるという症状がみられます。

 耳管というのは鼓膜の奥の空洞である鼓室と鼻の奥をつなぐ細い管です。耳管の長さは約3㎝で耳側の1/3は骨が、鼻側の2/3は軟骨がその周囲を取り囲んでいます。
耳管の回りの軟骨はへの字を横につぶしたような形をしていています。軟骨の外側には筋肉が付いていて、上あごの奥の柔らかいところの裏側に繋がっています。
軟骨の回りには筋肉の他にも脂肪やとぐろを巻いた細い血管の塊りもあって、普段はこれらが耳管を圧迫しているため、
閉じられていますが、唾を飲み込んだり、あくびをすると上あごの奥が動いて軟骨に付いた筋肉が耳管を外側に引っ張ることで一瞬だけ開きます。
その時に耳管を空気が出入りして、鼓膜の奥の気圧調節がされます。高層ビルのエレベーターで急に昇っていくと周囲の気圧が低くなります。
しかし鼓膜の奥は地上の圧のままのため鼓膜に圧が加わって耳がポーンとします。その時唾をごくんと飲むと鼻に余分な空気が流れ出てポーンとした感じはなくなります。

 ダイエットや体調不良で体重が落ちると、耳管を圧迫している脂肪が減って、本来普段は閉じている耳管が開いたままになることがあります。
これを耳管開放症といいます。耳管が開きっぱなしになると、鼻から耳管を通じて自分の声が鼓膜に伝わり耳に響いて聞こえます。
また耳がつまった感じや息する音が聞こえたり、息をするときに耳がぺこぺこするといった症状もみられます。
これらの症状は横になるとあまり気になりませんが、起き上がるとひどくなるという特徴があります。
これは横になると耳の回りを流れる血液が多くなり耳管の回りのとぐろ状の血管が膨らみますが、起き上がると足への血流が増え頭の血液が減るため、血管の塊りはしぼんで耳管が開きやすくなるからです。

 耳管開放症の診断では、これらの症状があり、横になった時に症状が軽くなるというエピソードがあれば、強く病気が疑われます。
診察では呼吸に合わせて鼓膜がペコペコ動くことが観察されることがあります。
さらに詳しく調べるためには耳管機能検査という方法があります。この検査では、鼻の穴につけた小さなスピーカーから鼻の奥に音を流して、その音が耳で聞こえるかを調べます。
正常では唾を飲み込む時だけに音が聞こえますが、耳管開放症では何もしなくても音が拾える結果となります。
耳管開放症の治療としては、体重のコントロールの他に、漢方薬による治療、鼓膜に小さなテープを張って耳がペコペコする感じを和らげる方法もあります。
鼓膜に小さな穴を開け、耳管に小さなピンをいれる治療も行われることがあります。