Q6
食事の時にむせることがあります。
心配ありませんか。

A

 むせは食物や水分が気管に入らないように体を守る働きです。鼻から吸う空気と口からの食事はのどではいったん同じ所を通ります。
その後空気はのどの前にある喉頭を経て気管に吸い込まれ、一方食物は喉頭のすぐ後ろの下咽頭を通って食道に流れ込みます。
空気と食物はのどで絶妙な立体交差することでそれぞれの道に分かれていきます。これがスムーズに行われないと食物が気管に入りかけ、それを防止しようとむせが起こります。
下咽頭と食道の境は普段は閉じていますが、食物が下咽頭を通過する一瞬だけ口が開きます。
これは喉頭が筋肉により前上方に引っ張り上げられるためです。のどを指で触って唾を飲むと、のどぼとけが一瞬上方に動くのが分かります。
また下咽頭と食道が繋がったあたりには括約筋という筋肉があり、普段はそれがしっかりと締め付けているためその間が閉じられていますが、
喉頭が引き上げられる一瞬だけ筋肉が緩み、下咽頭と食道が繋がります。
喉頭の一番上には喉頭蓋というスプーンの先のような形をした柔らかいヒダがついていて、喉頭が引き上げられると同時に喉頭蓋は下方に押し下げられ喉頭の入り口に蓋がされます。
それと同時に両方の声帯は真ん中で閉じられ、声帯でも空間が遮断されます。さらに上あごの奥が筋肉に上に引っ張られることで鼻とのどの間が瞬間的に塞がれます。
これらの複雑で瞬間的な動きは脳から系統的に送られる指令によって、頚のさまざまな筋肉が順序よく作動する巧妙なシステムですが、時間的にはわずか1秒以内で終了します。

 このように飲み込みは非常に精緻な機能であるため、正常でも時にミスが起きかけて、むせることはあります。
特にお茶や水などの飲み物では粘っこい食べ物に比べてのどの通過時間が短いため、むせやすい傾向があります。
しかし食事中に頻回にむせてしまうのは正常ではなく、何らかの異常が隠れている可能性が高いと考えられます。

 外来診察ではまず口の中やのどの形や動きを観察します。
それに次いで、嚥下内視鏡検査といって着色されたゼリーやペーストを実際に飲み込んでいただきながらファイバースコープでのどの中を食物が運ばれていく様子をみることで、
飲み込みの障害があるか、検査します。飲み込みがうまくいかない場合は、のどに食物が溜まったり、喉頭に誤って流れ込んでしまうことが観察されます。
たびたびむせて食事がとりづらい場合は、検査を受けることが必要です。