Q5
仕事で声を使っていると、苦しくなってきます。
どうしてでしょうか。

A

 声帯は頚のほぼ真ん中の高さにあり、気管の一番上に乗っかっています。
声帯は上から見るとV字形をした白い粘膜のひだで、息を吸ったり吐いたりする時にはV字形に開き、 声を出すときには後ろの部分が内側に移動して左右の声帯が真ん中でぴたりと閉じます。
その状態で肺から空気を送り出そうとすると、左右の声帯の間からぷつぷつと少しずつ空気が漏れて、その空気の力によって声帯が振動することによって、声が生み出されます。

 声帯は発声中、男性では1秒間に100回、女性では200回以上の細かく規則正しい振動をします。
振動する際には左右の声帯がこすり合わされ、声帯の粘膜に力が加わります。ギターの弦と同じように前後の中央部で最も大きく動き刺激も強くなります。
学校の先生や保母さん、スポーツインストラクターといった職業で仕事中よく声を使う人は、機械的刺激によって声帯前後の中央に部分的な腫れが生じます。
ちょうどペンをよく使う指にタコができるのと似ています。これを声帯結節と呼びます。声帯結節が女性に多くみられるのは声の高さがもともと高いせいです。
発声時に左右の声帯を閉じようとしても結節が邪魔になって、その回りに隙間ができます。そこから多くの息が漏れ出てしまうため、たくさんの息を使わないと声が出せなくなります。
以前と同じだけ会話をするためには何回も息を吸わなければならず、エネルギーを浪費します。
また、のどに力を入れて左右の声帯を強く締め付けることで声帯の隙間は小さくなり空気の漏れも減りますが、声帯や頚の余分な力が必要となり、少ししゃべっただけで疲れてしまいます。
結節の回りでは空気の乱流によって声帯の規則正しい振動が崩れるため、ガラガラした声になります。
声がれのため十分な大きさの声が出しづらくなり、無理をして声を張り上げようとすると声帯に加わる刺激はますます強くなります。

 基本的に声の使い過ぎが原因ですから黙っていれば治ります。学校の先生では長期休みの後半には楽になりますが、新学期が始まってしばらくするとまた声がれがひどくなります。黙っていては仕事にならず、仕事を一生懸命すれば、たちまち悪化します。
このようなジレンマに陥ってしまう方は、声の使い方を見直してみることが大切です。より望ましい発声法や、普段の生活における声の衛生について考え直すことで少しずつ改善の方向に向かうことが期待されます。