壮大な八ヶ岳連峰と満天の星空、長野県原村にある八ヶ岳中央農業実践大学校で現在、農業を学んでいる中村亮太さん。ずっと抱いていたコンプレックスや苦しさを克服できたのは、それを理解してくれる仲間との出会いや新たな環境に飛び込むことで様々な価値観を知れたから。苦しくとも楽しかった大学時代のこと、これからの夢についてお聞きしました。

「ありがとう」でもらえる元気

 高校の時に参加したボランティア活動の充足感が忘れられなくて、漠然とですが福祉が向いているのかなと思っていました。「ありがとう」という言葉をもらえることで自分自身も心が満たされ元気になることを知り、福祉を学べる地元の日本福祉大学に進学しました。

 特に興味があったのが、農福連携です。大学では農業サークルに所属し、近隣の障害者施設と連携して活動しました。施設の利用者の方が持つ休耕地を利用させてもらい、ジャガイモや大根、枝豆等を栽培。収穫した作物を土地所有者の方へお渡しする他、施設の放課後等デイサービスを利用している子どもたちと収穫体験をして配ったりもしました。

 農業のノウハウが全く無かったので、本で調べるなど手探りで行っていましたが、最初は上手く育たなくて…。そんな慣れない様子を見かねた地元の農家さんがアドバイスをくれるようになり、何とか収穫できるまでになりました。畑へ来てくれる利用者さんたちとの交流や、鍬やスコップを使い人力で体を動かすことの楽しさ、収穫できる喜びを大きく感じることができ、将来の夢が明確になりました。

※障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みのこと

サークルでの農作業

自分を変えてくれた“読書会”

 大学時代に熱中したことはたくさんありますが、その中でも、(非公式ですが)学部の先生と学生数人で行っていた“読書会”が自分の考え方を大きく変えてくれました。

 読書会は簡単に言うと「本を持ち寄って、みんなで本について語りましょう」という名目でしたが、「研究室に集まって遅くまで語り合う」みたいなイメージが大学生っぽくていいなと魅かれて…。福祉の本に限らず、色々なテーマの本をふくしの視点で語り合ったのですが、他者の意見や考え方を知ることで自分自身の視野が広がっていく感覚がありました。さらに考えを深める力が身につき、自分の言動に自信を持てるようになったのもこの会のおかげです。

 高校時代に勉強やスポーツで大きなコンプレックスを感じ、自分には誇れるものがないと苦しんだ時期があったのですが、読書会に参加するようになってからは、必ずしも自分の苦手とするところで勝負する必要はないと考えられるようになりました。以前は持てなかった「自信」というものを少しずつ持てるようになった気がします。

大学の先生や仲間と

ふくし×農業で地域貢献

 日福ではふくしを突き詰めて考える4年間だったと思います。日福が掲げる「ふつうのくらしのしあわせ」はすべての人にその権利があるということですが、そのすべての人には「自分」も含まれると気づけたことは大きな学びでした。ぼくの場合は「ふくし×農業」でしたが、ふくしは色々なものと相性がいいので、自分の興味のある分野と掛け合わせてみると面白いと思います。

 現在は農業実践大学校の学生として作物の育て方はもちろんですが、自然の厳しさや農業の実状を直に学び、今後の働くイメージを膨らませているところです。

 日福で学んだ「ふくし」と大学校で学んだ「農業」で、農業の人手不足、働きたくても働けない人がいるという両方の課題に貢献していきたいと考えています。

八ヶ岳中央農業実践大学校での学びの様子

高校生の皆さんへ

 自分はいい意味でも悪い意味でも苦労をした学生生活でしたが、それは今の自分に必要だった経験として大切に感じています。やってきたことは全て無駄じゃなかったと思えるようになりました。無駄か無駄じゃないかを判断するのは自分自身ですが、「無駄なことなんか一つもない」と思って生活することで、その後の成長につながるものだと信じています。

 一般的な社会の流れに必ずしも囚われなくてもいいと思うんです。同じ漢字ではあるけど、“楽”な学生生活よりも“楽しい”学生生活を送ってください!

取材後記

 愛知県出身の中村さんと長野県にある松本オフィスとの繋がりは4年前に遡ります。当時1年生だった中村さんが長野県内でのフィールドワークに参加してくれたことがきっかけでしたが、その時に自分の苦手なこと、抱えている特性について包み隠さず素直に話してくれたことが印象的でした。自分のことよりも人の役に立てることが幸せという中村さん。高校生の時から思い描いていた「農業×ふくし」でたくさんの人を幸せにしてくれることと思います。

八ヶ岳の麓で大自然を感じながら学んでいます

八ヶ岳中央農業実践大学校 研究科

中村 亮太さん

RYOUTA NAKAMURA

  • 日本福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科2022年卒業
  • 愛知県出身

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<取材:松本オフィス>