地域資源をふんだんに活用した、こだわりのパン屋さんが奥州市にあります。「夢楽(むら)のパン工房Yadorigi」店主の佐藤幸治さんにお話を伺いました。

充実した学生生活

 福祉関係の仕事をしていた母や、社会福祉学部 保健福祉学科(※現在の社会福祉学科)に進学していた従兄弟から影響を受け、日本福祉大学で学ぼうと決めました。興味があったトライアスロンが出来る点も日福を選ぶ後押しになりましたが、入学したらなんとトライアスロン部がないと判明!(笑)気持ちを切り替えて入部した陸上競技部で長距離走に勤しんだ結果、100kmマラソンに挑戦して完走することができました。アルバイトでは、半田市にあるスポーツクラブでインストラクターをしていました。

 振り返ってみると、サークルやアルバイトで得たものは多々あります。色んな人たちとの関わりを通してコミュニケーション力が上がったこと。「目標を設定する」「計画を立てる」「トレーニングを実践する」「分析し改善する」の積み重ねで、計画力や実行力が身に付いたこと。何より学部・サークル・アルバイト、どれも4年間最後までやり遂げられたこと。実は、「いざとなったらほかの学部に転部出来るし…」くらいの気持ちで経済学部を選んだのですが、学び始めると面白くて転部することなくそのまま卒業しました。

 そんな大学時代の経験は、現在の仕事にも活かされていると感じています。

震災で強まった地元への思い

 大学卒業後は大手パンメーカーに就職し、愛知県内のショッピングセンターのベーカリー部門で店長を務めてきました。そんな中、2011年に東日本大震災が発生。当初は岩手県に住む家族となかなか連絡がつかず、とても心配しました。姪っ子用の離乳食が足りないと知ればこちらで手配して送ったり、有志と一緒に石巻市や陸前高田市へ出向いて焼きたてワッフルを振舞ったり、被災地支援もしました。

 いずれは地元で暮らしたいと考えていましたが、震災をきっかけにその思いがより強くなり、11年間勤務した会社を退社し岩手県へ戻ろうと決意しました。大学進学後に市町村が合併し現在の奥州市となったこともあり、まずは「今のふるさとには何があるのか、自分には何が出来るのか」を知る必要があると考え、地域おこし協力隊に着任しました。

 地域おこし協力隊では農業や6次産業の支援、首都圏へ向けたPR活動などを中心に取り組み、協力隊在任中に知り合った前オーナーから声をかけていただいて、お店を引き継ぐことになりました。

岩谷堂箪笥製作所に特注した漆塗りの棚に並ぶ焼きたてパンと、市内の農家さんによる6次産品。
パンの通販サイトでネット注文も受け付けている。

地域の魅力を伝えるお店へ

 当店では、岩手県産の小麦粉に奥州市産のハチミツと卵、そして南部鉄器で沸かしたお湯を使って食パンを作っています。仕上げに南部鉄器製の焼き印を押し、伝統工芸品の岩谷堂箪笥の棚に並べ、ジャムやドライフルーツなど地域の6次化商品も一緒に販売しています。

 店内には水彩画や手芸、木工品など、地元の作家さんたちの様々な作品を月替わりで展示しているので、パンだけでなく魅力的な作品たちも楽しんでいただけます。

 わが子たちをモチーフにしたお店のロゴは中学の同級生にデザインしてもらったものですし、地域の方々や友人・知人など、これまで出会った方々とのご縁が詰まったお店です。岩手県には、誇れるものがたくさんあります。これからも地元資源を活用し、地域の魅力を伝えていきたいです。

佐藤さんのお子さんたちをモチーフにしたお店のロゴ
1ヶ月ごとに変わる展示スペース(取材時は刺し子と水彩画展)

前オーナーから引き継いだ窓際のテーブルと店舗横の自販機には、地元の名産品が並んでいる。

これからのこと

 今後の目標は、子どもたちが大きくなるまでパン屋を継続することです。この豊かな環境でのびのびと成長してほしいと願っています。家族みんな体を動かすことが好きですし、来年は奥州市のマラソンに挑戦してみようかなとも考えています。

 コロナが落ち着いたら、大学卒業後も繋がっている陸上競技部の友人たちとまた愛知県で集まりたいです。卒業生のみなさんとも、今後色々と協力出来たらと思います。

 学生のみなさんは、あらゆることに積極的にチャレンジして、自分がやりたいことを見つけてくださいね。

夢楽(むら)のパン工房 Yadorigi 店主

佐藤 幸治さん

KOJI SATO

  • 日本福祉大学 経済学部 経済学科 2008年卒業
  • 岩手県/黒沢尻北高等学校出身

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<取材:山形最上オフィス>