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取組レポート③ 高知大学

取組レポート③ 高知大学

2020年2月10日、テーマⅤで先進的な取組を行っている高知大学に取材を行いました。今回の取組レポートでは、卒業段階における学生の力の客観的な評価に関する取組を中心に報告します。

高知大学では、ディプロマ・ポリシーに基づく「10+1の能力」を定めています。「10+1の能力」は、学生が身に付けるべき資質・能力を明確化したもので、「専門分野に関する知識」などの[知識・理解]、「論理的思考力」などの[思考・判断]、「コミュニケーション力」などの[技能・表現]、「自律力」などの[関心・意欲・態度]、これらの諸能力を統合して外的に働きかけていく能力[統合・働きかけ]などに分けられています。高知大学ではこれらの能力を、 [知識・理解]に関してはGPAから、[関心・意欲・態度]に関してはルーブリックによる学生の自己評価から、[統合・働きかけ]に関してはパフォーマンス評価からそれぞれ評価しています。特に、[思考・判断]などに関しては、GPAとルーブリックによる学生の自己評価の両方を参考に評価しているようです。

評価の方法にも、様々な工夫がなされていました。たとえばGPAによる評価を厳格に行うため、その基準や方針を全教職員と共有するだけでなく、成績評価分布の開示を行うことで透明性を担保していました。他にもルーブリックによる学生の自己評価やパフォーマンス評価では、単に学生の自己評価をそのまま載せるのではなく、8つの能力を自己評価できるセルフ・アセスメントシートを開発し、シートを用いた教員による面談と組み合わせて評価していました。

これらの評価が確認できるのは、卒業時に学位記・成績証明書と合わせて発行される「ディプロマ・サプリメント」だけではありません。評価をeポートフォリオ上からいつでも確認することができる、「ポートフォリオサマリー」というシステムを開発しており、自己省察を行い自律的にPDCAサイクルを回す、教員との面談に利用する、就職活動に活用するといった様々な場面で利活用できるようになっていました。

今回、取組についてインタビューさせていただき、評価に対して細やかな対応をしていることが印象的でした。たとえば、ゼミの設定のない1、2年生では、自己評価の基準が学生によってばらばらになりがちです。高知大学では、アドバイザー制度を導入し、学生一人一人に担当の教員を配置し、必ず面談を行うよう設定されております。また、「10+1の能力」が社会に必要な力なのか、獲得した力は社会に通用しているのかを卒業生へのアンケートをもとに調査し、ディプロマ・ポリシーと社会とをつなげる仕掛けがありました。他にも、「10+1の能力」を単に評価するだけでなく、アクティブ・ラーニングを取り入れるための整備を行い、「10+1の能力」を身に付けられるような環境づくりにも取り組んでおられました。

(聞き手:日本福祉大学 全学教育センター 教授 中村信次、助教 村川弘城)

関連リンク
高知大学 事業概要
https://www.n-fukushi.ac.jp/ap-portal/summary/?mode=detail&entryID=8

高知大学 大学教育創造センター長 小島郷子教授、学務課教育企画係長 川村悠子氏への取材の様子