「一生かかってでも勝つ!」普段は静かでとっても優しい彼女から、そんな言葉が出るとは思わなかった。陸上競技を始めて彼女と出逢った。最初は人見知りのようで、目も合わしてくれなかったが、勝って負けてを繰り返すうちに「親友」と呼び合う関係になった。彼女は私にとって、なくてはならない大きな存在だった。 中学三年生の総体予選。私たちの最後の大舞台ともいえるこの大会で、私は一着だった。嬉しくてたまらなかった。今までの努力の全てを認めてもらえた気がした。この時の私は彼女のことなど忘れ、ただ目の前の栄光だけを見ていた。 この試合が終わって少ししてから、彼女に手紙をもらった。「おめでとうなんて言わないよ。一生かかってでも勝つ!」と書かれていた。私の中で何かが大きく変わった。「彼女とまだ一緒に走りたい!」とその時感じた強い想いが、今でも陸上競技を続ける原動力になっている。やっぱり私には、彼女が必要なのだと思う。 高校生になった。彼女は強豪私学に進学し、今の私には遠い雲の上の存在になった。だが、私は今幸せだと言える。彼女を目標とし、一緒に陸上競技を楽しめている今が。またあの時のように、千分の一秒で競えるライバルになるために、日々の生活習慣から見直して練習に励んでいる。 彼女に伝えたいことがある。「あなたのおかげで、今の私がある。今は遠くても必ず追いつくから。まだライバルだと思っていてほしい。一生かかってでも勝つ!」と。 私はつらいことがあった時、いつもあの手紙を何度も読み返している。彼女なりの精一杯の想いが詰まった、その一言一言を。
「親友」でありながら、一生競い合える「ライバル」がいることの素晴らしさが、読んでいて伝わってきます。そんな爽やかさを評価して、審査員特別賞に選びました。 中学時代、彼女から「一生かかってでも勝つ!」と書かれた手紙を受け取った作者が、高校生になった今、逆に彼女に対して「一生かかってでも勝つ!」という想いを抱いています。そのお互いに切磋琢磨していく姿が、第2分野のテーマに合っています。私たちも、作者とライバルの彼女に、「これからも競い合って成長して欲しい」と、エールを送りたいと思います。