近年、社会で話題にのぼっているものの一つに、「赤ちゃんポスト」というものがある。親が育てることができなくなった子どもを託すことができる施設だ。時々新聞やニュースで取り上げられ、それに対して「親は無責任だ」という意見とともに、「子どもがかわいそうだ」といった意見をよく見かける。しかし本当にそうなのだろうか。 「赤ちゃんポスト」に子どもを託す親は、様々な事情で、子どもを育てることができない人が大半だ。だとすれば、育てることができない親に育てられるよりも、他人でも責任を持って育てられる人に引き取られる方が、子どもにとって幸せなことではないだろうか。 「産みの親より育ての親」という言葉があるように、産みの親に育てられることだけが幸せでは無いと思う。また、「赤ちゃんポスト」は子どもだけが幸せになれる施設ではない。例えば、「赤ちゃんポスト」に子どもを引き取りに来た、言わば育ての親となる人たちはどうか。子どもを不要とする人が、子どもを引き取る筈がない。つまり、子どもを本当に必要とする人々にとっても幸せになる施設だと言える。 一見すると、不幸しか生まないと思われがちな「赤ちゃんポスト」。親としての道徳、産みの親に育てられない子の不幸と、型にはめられ、一方的に論じられがちだ。社会の様々な問題は、起こした責任を追及し、理想という枠から外れたものを不幸と見なしてしまう。だが、視点を変えると、意外な所に幸せが隠れている。不幸に見える場面でも、どこかに必ず幸せは隠れている。 子どもにとっての幸せとは、やはり親からの最大限の愛情だ。それが産みの親でなくても、最大限の愛情を授けることができる。東日本大震災により、沢山の人や物が失われた。今の日本に必要なのは、不幸に見える場面であっても幸せを見出す力と、ごく当たり前の中から幸せを感じ取れる力だ。
「赤ちゃんポスト」に目を付けたユニークな視点が良かったと思います。しかも、「いい」「悪い」という一方の視点で語るのではなく、「赤ちゃんポスト」は子どもにとって幸せな面もあり、不幸な面もあるという両方の視点で考えている点もいいと思います。社会の問題は、「いい」「悪い」といった答えが一つだけでないことによく気付いて、意見をまとめていった点を評価しました。