36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2012年度 日本福祉大学 第10回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
最優秀賞 言葉の選択
静岡県立清水東高等学校 3年 城内 香葉

 テレビから流れるニュースに、戸惑うことがある。高齢化問題、介護問題など、「○○問題」という表現に違和感を覚えるからだ。長寿国であることは、日本の誇りであるはずなのに、まるで長生きすることが社会のお荷物みたいに聞こえてしまうのはなぜだろうか。祖母と一緒にテレビを見ている時に、そのような言葉がニュースで使われると、不意に祖母が視線を落としていることに気付き、私はとても切ない気持ちになる。
 最近では、「がれきの受け入れ問題」という表現が非常に気になった。がれきの山に震災からの復興を妨げられ、今も不便な生活を強いられている被災地の方々は、当然のように使われているこの言葉を耳にして、どんな気持ちでいるのかと心が痛む。受け入れに対して賛成と反対のさまざまな意見がぶつかり合うことは十分に理解できるし、受け入れが決まってからも、検討、議論すべき課題が山積みであることもよくわかる。しかし、そのような過程を「問題」と表現する必要があるのだろうかと疑問に思う。例えば、「がれきの受け入れについて話し合いが持たれました」と柔らかい表現に変えるだけで、被災地の方々は、「自分たちのために、日本各地で話し合ってくれている」と感じ、励みにさえなるのではないだろうか。
 言葉の使い方一つで、相手への伝わり方は大きく違ってくる。祖母との生活を通して、また被災地でのボランティア活動に参加して痛感することだ。私たちは普段から、相手の立場に配慮した「優しい言葉」の使い方、伝え方を心掛けることが大切だと思う。
 そして、「○○問題」という言葉があまりにも頻繁に使われ過ぎているためか、その言葉に関わる人々への思いやりを忘れ、更にはその言葉によって喚起されるはずの危機感や、真に重大な問題として受けとめ、考えていく意識が希薄になっていくとしたら、そのことの方がはるかに問題ではないだろうか。

講評

 第4分野の「社会のなかの『どうして?』」というテーマに合ったエッセイです。審査員の私たちは「言葉」を使う仕事をしていますから、作者の「『○○問題』という表現に違和感を感じる」という問題提起を受けて、「今まで、よく考えもせずに使っていなかっただろうか?」と振り返るいい機会を与えてもらいました。そんな若い人の感性と目の付け所は素晴らしいと感じて、この作品を最優秀賞に選びました。これからも、こうした敏感な感性を大切にしてください。そして、背伸びして借り物の言葉を使うのではなく、自分の言葉でまとめている点もいいと思います。

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