科目名 社会福祉原論T

単 位 数 学年配当 開講期間 担 当 教 員
2 1 後期開講 伊藤 文人

テーマ
ソーシャルワーカーにとっての「社会福祉の原理(構造と論点)」を学ぶ

科目のねらい
<キーワード>
社会福祉の原理(principle)  社会福祉および福祉国家の歴史と理論
社会福祉の構成要素(政府、市場、家族、個人)

<内容の要約>
 本講義は、社会福祉というフィールドが私たちの生きている「社会」総体との関係でどのように位置付けられるのかを、受講生が歴史的かつ理論的に理解できるために、換言すれば本講義は「社会福祉がなぜ社会で必要な存在なのか」とか、「社会福祉が存立する意義や根拠とはなにか」を理解するために設定されます。
 学生の中には、政策や制度、理念や思想・哲学は、目の前で苦しんでいる、傷ついている人々を救済/支援したりすることと直接関係がないと思っている人も多いでしょう。確かに「目の前の苦しみをなんとかしたい」という思いは、援助実践(福祉的営為)の原動力になりますが、政策や制度それを支える思想や理論との「つながり」を省みない態度は、社会福祉についてまわる「社会性」を無視して、福祉的活動を単なる「私事的な行為」に貶めてしまいかねません。しかし、実際の社会福祉は、歴史的に形成された政治的・社会的営みとして存在している生き物であり、人間の集合的活動によって常に変化してきたものであり、固定されたものではありません。社会福祉を考えることは、「社会的必要(ソーシャル・ニーズ)」をどう解明・把握し、これを誰が・どのように・どれだけ・いかなる理由に基づいて「充足」するのか、そしてその「負担」をいかに分かち合うか、といった公共的関心事を考えることと同義です。本講義では、以上の問題意識から、社会福祉の「歴史性」「社会性」「政治性」「公共性」に関する認識と理解を深める手がかりをなるべく平易に解説していきたいと思います。
 

<学習目標>
現代社会における福祉制度の意義や理念、福祉政策との関係について理解する
福祉の原理をめぐる理論と哲学を理解する
社会福祉と福祉国家の歴史的形成過程と社会的機能を理解する

授業のながれ
イントロダクション@:社会福祉原論とはなにか、どのようなことを何のために学ぶのか?(その1)
イントロダクションA:社会福祉原論とはなにか、どのようなことを何のために学ぶのか?(その2)
福祉政策の課題と動向@:現代社会が生み出す社会問題(失業・低賃金・不安定就労・ホームレスと社会的排除)
福祉政策の課題と動向A:現代社会が生み出す社会問題(老齢・障害・不健康・女性・外国人・アンダークラス(下流)
福祉政策の課題と動向B:福祉政策の現代的課題(セイフティネットとワークフェア、社会連帯、社会的包摂、市民権シティズンシップ)
福祉の歴史的発展@:前近代社会における福祉
福祉の歴史的発展A:近代社会における福祉
福祉の歴史的発展B:近代社会における福祉(福祉国家の時代)
福祉の歴史的展開C:現代社会における福祉(ポスト福祉国家の時代)
現代社会における福祉制度と福祉政策(福祉政策の概念と理念、政治と福祉政策、福祉政策の主体と対象)
福祉の原理をめぐる理論と思想@:社会政策と社会福祉の関係、社会福祉政策の成立、社会福祉の補充性・代替性、社会福祉の固有性
福祉の原理をめぐる理論と思想A:福祉思想の前提と人間観、社会観、専門職倫理とはなにか?
福祉対象創出のメカニズム@:資本主義と貧困
福祉対象創出のメカニズムA:貧困認識の方法とその争点(絶対的貧困、相対的貧困、社会的排除、スティグマ)
まとめ:社会福祉原論Uへの橋渡しとして

準備学習の内容・学ぶ上での注意
(1)前期に「社会福祉発達史T」を受講することを勧めます(編転入生も同じ)。物事の歴史を知らないと理論的な理解ができません。「原論」とは、「原理論」の意味であり、それは「対象(=社会福祉)とするものを根源にまで遡って(掘り下げて)考察する」という意味です。つまり「そうした考察なしに、その対象が存立することがありえない」ということです。
(2)毎週設定されたトピックを理解するための「演習課題」を設けます。この回答は、別紙で提出することを義務づけます(評価対象)。なお、これをするための「コアリーディングリスト」(講義をより理解していくための学術文献一覧)も設けます。図書館に入っているので読んでみることが期待されます。
(3)講義開講後30分を経過した後での入室は禁止します。教員の許可なく入退室をする学生には退席を命じることがあります。なお、講義中は、私語厳禁です。これが遵守されない場合は、講義が中心されることがあります。ただし、グループ討議の時間は大いに語ってください(もちろん、課題についてですが・・・)。
(4)講義で分からないことがある、疑問がある場合は、直接間接に質問していただいて結構です。メールで質問していただいても構いません。ただし、メールで質問する場合は、件名、学籍番号、学部学科、氏名を明記した上で送信してください。
(5)あせらず、じっくり講義を聴き、復習をこころがけてコツコツと勉学に励んで下さい、必ず勉強が楽しくなるはずです。

本科目の関連科目
(専門科目)社会福祉方法原論T・U、社会福祉発達史T・U、社会保障論、公的扶助論、ジェンダー論、医療福祉論、社会福祉関係法、国際福祉論
(教養科目)社会学、政治学、歴史学、心理学、法学、哲学、倫理学、憲法学、平和学、経済学

成績評価の方法
課題・小テスト
レポート
中間試験
定期試験
そ の 他
10%


60%
30%
 原則的に、学期末試験(60%)と自作ノートの評価(30%)、「演習課題」の提出(10%)で評価します。

テキスト
■テキストを使用する
■レジュメを使用する
□未定 (最初の授業で指示する)
<著者>岩田正美・武川正吾・永岡正巳・平岡公一編著 <テキスト名>社会福祉の原理と思想(社会福祉原論) <出版社>有斐閣



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