日本福祉大学 経済学部

福祉市場論

単位数 学年配当 開講形態 教員名
2
2
前期 (隔週)
原 澤 謹 吾

テ | マ 「福祉市場」 形成の背景とその特質を理解し、 「福祉産業」 の課題を探る。

講義のねらい
 経済学においてはこれまで、 社会福祉ないし福祉サービスを 「厚生経済学」、 「公共経済学」、 「社会保障財政論」 の対象として扱うことが多く、 「福祉産業論」、 「福祉市場論」 として論じることは少なかった。 しかし近年、 「福祉国家」 を目指してきた先進諸国の多くが財政上の困難に直面し、 福祉分野への 「市場原理」 の導入、 「民間企業の参入」 を図る流れが強まってきたことを背景に、 福祉分野を産業分析の対象とする試みが始まっている。
 本講義では、 「福祉サービス」 が社会保障政策を背景として歴史的に形成されてきた経緯を理解した上で、 社会保障財政論やサービス産業論の分野における経済分析の方法に学びながら、 福祉サービス市場の現状を把握し、 福祉産業の課題を探る。

講義のながれ
1. 「福祉市場」 とは何か
・家族労働としての育児・介護
・社会政策、 社会保障としての 「福祉サービス」
・経済学における 「福祉サービス」 へのアプローチ
・社会保障制度改革と 「市場原理」 の導入
2.「サービス産業」 としての福祉産業の特質
・「サービス」 とは何か/サービス産業の様々な定義
・「サービス」 と 「サービス産業」 の特質
・サービス産業の中での 「福祉産業」 の特質
3. 高齢化社会と介護保険市場の創出・形成
・介護保険制度導入の背景―高齢化の急進展と家族介護力の低下
・介護保険制度のねらいと仕組み
・介護保険市場の形成過程
・介護保険市場の地域性
4. 介護保険市場の需要分析
・介護サービス需要のミクロ分析
・介護サービス利用者の属性と介護需要 (高齢者の有病率と要介護度/高齢者の資産・所得水準と利用率/高齢者の世帯類型と家族介護力)
5. 介護保険市場の供給分析 (T)
・サービス分野別参入構造 (市場構造)
・「医療・福祉複合体」 論
・異業種からの参入事例
6. 介護保険市場の供給分析 (U)
・サービス分野別経営実績 (市場成果)
・介護報酬と事業の採算性 (ニチイ学館のケース)
・ホームヘルパーの労働供給とサービスの質
7. 障害者福祉市場 (T)
8. 障害者福祉市場 (U)
9. 少子化の経済学的考察
10. 育児サービス市場
11. 社会保障費用の国際比較
・ILO 「社会保障の費用」
・OECD 「社会保障支出統計」/「保健医療費統計」 など
・主要国の社会保障制度と 「福祉サービス」 の市場化の現状
12. 海外主要国の高齢者介護サービス
・ドイツ
・スウェーデン (またはデンマーク)
・イギリス
・オーストラリア
13. 福祉市場の展望と福祉産業の課題
・「介護保険市場」 の評価
・医療制度改革と介護保険制度
・高齢者介護と障害者介護
・「サービスの質」 の評価システム など

学ぶ上での注意・担当教員からの希望
・ 「福祉市場論」 というテーマは新しい分野である。 したがって、 既存の知識体系を吸収するという受動的な姿勢ではなく、 多様な研究成果や生のデータに刺激を受けながら自分なりの問題意識を育てる、 という主体的な姿勢が大切である。
・ 講義では特定のテキストを定めずその都度レジュメを配布する。 また、 講義の最後に担当教官とのディスカッションの機会を設け、 次回までに予習すべき資料を指示するので、 出席を重視して欲しい。

成績評価の方法
・ 出席 30 点、 中間レポート 30 点、 期末テスト 40 点の配分とする。

テキスト 特に定めないが、 以下の参考文献を予習することを奨めたい。
・ 宮島 洋 『高齢化時代の社会経済学』 岩波書店 (1992 年)
・ 村上 雅子 『社会保障の経済学 (第 2 版)』 東洋経済新報社 (1999 年)
・ 井原 哲夫 『サービス・エコノミー (第 2 版)』 東洋経済新報社 (1999 年)
・ 下野恵子/大日康史/大津廣子 『介護サービスの経済分析』 東洋経済新報社 (2003 年)
・ 漆 博雄編 『医療経済学』 東大出版会 (1998 年)



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