身体障害者の雇用問題は、 過去幾多の経済環境や産業構造の変化に遭遇してきました。
今日のグローバリゼーションや経済不況のなかでも、 活性化に向けた試練が積み重ねられています。 このゼミでは、 法 (制度) 的側面から障害者の雇用
(職業訓練を含む) の促進について、 日本と諸外国との比較検討を試みます。 日本で、 初めて 「身体障害者雇用促進法」 (1960 年)
が制定されたのは、 今から 41 年前のことになります。 現行の 「障害者の雇用の促進等に関する法律」 に至るまで、
幾たびもの改正がおこなわれてきました。 日本の障害者雇用施策の特徴の一つは、 割当雇用・雇用率、 雇用納付金制度を基軸に、 変革されてきたことです。
それに類似した制度を早くから採用している国は、 かなりの数にのぼります。 しかし他方で、
イギリスやアメリカのようにそうした施策を基軸においていない国もあります。 そこでは、 雇用の実効性を確保するために、
一体どのような制度化が進められ促進策が実施されているのか、 その変遷をたどり日本と比較検討することは、 今日的に興味ある問題といえます。
障害者が、 「働くこと」、 「人たるに値する生活を営むこと」 について、 社会保障とは異なる視点、 すなわち
「すべて国民は勤労の権利を有す」 (憲法 27 条 1 項) という場合の、 「権利性」 容認の仕組みは、 「能力に応じて」 論や 「採用の自由」
論などの観点から、 ついに 20 世紀においては果たされませんでした。 そこで、 従来の社会保障的保護就労の視点からだけではなく、
一般労働市場への参入・統合を展望する視点に立って、 それの困難な要因と克服事例、 および限界等を諸外国の事例をまじえて析出し、 国民としての
「勤労権」 の主体者性について模索検討したいと考えています。 |