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「ふくし」を思う

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講演録

田中賢教授 講演録 「犯罪者はどこに目をつける? 安全安心の防犯まちづくりを考える」

日本福祉大学セミナー 文化講演会
「犯罪者はどこに目をつける? 安全安心の防犯まちづくりを考える」

  • 講師:
    田中 賢 教授(日本福祉大学 健康科学部)
  • 日時:
    2013年7月27日(土)

※所属や肩書は講演当時のものです。

ターゲット選びの「合理的」な理由

 犯罪に遭わないようにするには、犯罪者の行動を理解することが大切です。犯罪者の行動なんて理解できるの? と思われる方が多いと思いますが、実は、犯罪者の行動というのは非常に合理的です。皆さんが夕食のお買い物をするときに、店の近さ、品ぞろえの良さ、価格の安さ等々、いろいろな理由でお店を選ぶのと同じように、犯罪者も彼らなりの理由で狙うターゲットを決めているのです。そこで、私の研究している防犯環境設計という学問では、どういう環境や状況で犯罪が発生するかを考え、犯罪予防に役立てようとしています。

 研究の際には、元犯罪者の方に実際に実験などに立ち会ってもらって、話を聞いたり、デモンストレーションをしてもらったりします。彼らの話によると、町歩きをして、狙う家を一つ決めるのではなく、大まかに二つ三つ目星をつけるそうです。そのときにタイミングが合えば犯行に及びますが、犯行に及ばないこともあるそうです。

 例えば、AさんとBさんの家があります。Bさんの家はAさんに比べると立派でお金もありそうだけれど、その分、防犯的にはしっかりしているといったときに、どちらの家を狙うと思いますか? Aさんの家を狙うのです。捕まりたくない、最低限その日の食事ができればいいという思いからです。

 また、そのときは何らかの理由で犯行に及ばなくとも、犯罪者は順番にいろいろな街の下見をしていて、2~3カ月に一度はそのエリアに戻っていくと言われています。1年後、同じ所にぶらっと行ってみたら、隣にCさんの家が建っていました。Cさんの家は他の2軒に比べて一番大きいけれど、その分、さらに防犯力が高い。そうすると、今度はBさんの家を狙おうとするのだそうです。つまり、相対的な理由からもターゲットを選んでいるのです。

犯罪者から狙われやすい町並み

 どんな侵入盗犯でも下見をします。侵入する前に2~3回はその家の周りを回ります。まず一回りして、同じルートを逆回りするのですが、犯罪者は真っすぐ前を見て下見しています。あまりキョロキョロしていると怪しまれるからです。キョロキョロできないので一方向からの視野では死角が産まれます。その死角を埋めるために逆回りをするのです。そして周囲の状況を頭の中でパズルのように組み合わせながら、「ここからの視線は通らないな」などと考えています。

 ターゲットを決めるときには、最初からここでやると決めているのではありません。駅を降りて、少し町歩きをするのです。人通りが少なくて見とがめられないか、自分のようなよそ者でも気楽に歩けるかといったことを考えながら歩いて、だんだん街区に近寄ってきます。そして、このエリアはおいしいなとか、獲物の匂いを嗅ぎつけてくると、目が据わってくるといいます。

 200mぐらいまで近寄ってくると、犯行後に逃げやすいかどうか、脇道が多いかどうか、視線が通りにくいかどうかなど、かなり具体的に観察します。私はよく犯罪があったエリアに話を聞きに行くのですが、北関東で侵入盗が多発したエリアは、昼間に1時間ほど町歩きをしても誰とも出会わなかったほど、人通りの少ないニュータウンでした。通りが一直線になっている町は視線が通りやすく逃げにくいので、普通、犯罪者は嫌がるのですが、いくら見通しがよくても人がいない所は比較的好まれます。

 2005年11月に広島市の矢野地区で、小学校1年の少女が外国人に殺害される事件がありました。ここは古い町並みが残っている所で、入り組んだ道が多い上に、古くからの住民は高齢で、あまり外に出ない人も多いのです。そうすると、周囲からの見守りの目が届かないのです。こういう所は犯罪者からは魅力的に見えます。また、追っ手を振り切りやすいというのが一番大きいのです。普通の人には道に見えないところでも、犯罪者にとっては人が通り抜けられる所・登れる所はみんな通路で、いざとなれば塀を乗り越えて行けるなと考えるのです。

 また、隣の家との関係があまりよくない家、あいさつぐらいはするけれども、それ以外はしないという家も狙われやすくなります。隣の家との仲をどうやって察知するかというと、隣の家との境目の塀周りや垣根などを見るそうです。隣の家の方と交流がなければ、その間が雑然としていても気にならないものです。例えば使わなくなった子どもの自転車をその垣根の所に置いていたり、庭を掃いたゴミ袋をその辺りに置いていたり、落ち葉がたくさんたまっていても気にしないといった様子です。

 犯罪者が意識する「隣近所」とは、家の20m四方、向こう三軒両隣ぐらいの視線の通りです。もちろん隣の家に人の気配があるかどうかも大事なチェックのしどころです。例えば向かいの家にうっそうと木が茂っていて視線が通らない、あるいは隣の家に人の気配がないときには狙われやすいので、注意した方がいいと思います。

犯罪者が狙う三つの隙

 皆さんや皆さんの周りに、子どもの見守りのボランティアをされている方がいらっしゃると思います。全ての子どもに目配りをするというのは難しいと思いますが、狙われる子どもは比較的パターンが決まっています。一人遊びの子ども、隙のある子、ぼーっとしている子が狙われやすいというのは分かると思いますが、その他に、幼いのに大人っぽい格好をしている・大人っぽいのに幼い格好をしているなど、どこかバランスが悪い子、無防備に人懐っこい子、向こうから近寄ってくる子はターゲットになりやすいと言われています。

 ですから、子どもに「近所の人にはあいさつをしましょう」と教えるときは、親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんが、必ず子どもと一緒に町歩きをして、「今度小学校に上がった◯◯です。よろしくお願いしますね」とあいさつをして回ってください。皆さんがあいさつをするのは、顔見知りで仲の良い人、信頼している人でしょう。そういう人にはあいさつをし、そうでない人にはむやみに近付かないよう教える必要があります。また、近所の人に顔と名前を覚えてもらえば、自然と親近感がわき、周囲の見守りの目が届くようになります。

 声かけや痴漢やいたずらといった直接的なアプローチ以外にも、盗撮などの被害もあります。ですから、小学校の先生には、校庭などは周囲からの見通しを考えて盗撮犯が潜めないよう植栽をある程度刈り込んで地域住民に見守ってもらうとともに、プールなどは視線を遮るために堀やフェンスの内側(プール側)に植栽を植えて盗撮犯が潜めず、かつ外からの視線を遮る工夫をお願いしています。また、女の子だけでなく、男の子も意外なほど犯罪被害に遭っていますから、男の子だから大丈夫という先入観は持たないように見守りをお願いしています。

 もちろん、狙われるのは子どもだけではありません。犯罪者は、あなたのちょっとした生活の隙と空間の隙を狙っています。空間の隙とは、先ほどから申し上げている町並みや近所との関係です。生活の隙とは、時間の隙と心の隙で、ゴミ出しや買い物、あるいは近所に薬をもらいに行くのに「ちょっとだから」と鍵掛けをせず空き巣に入られるということがよくあります。警備会社に入ったり、窓にも良い錠前を使ったり、住まいが万全でも、生活の隙があっては元も子もありません。

 あなたの生活の隙は幾つありますか? ①鍵を掛け忘れている、②玄関の合鍵をどこかに隠している、③夏場に窓を開け放って寝ている、④家の周りが散らかっている、⑤物音に反応しない、⑥個人情報の入った紙を破らず捨てている。一つでも該当する人は、要注意です。加えて、夜、大きな家に照明が一つだけポツンとついていると、犯罪者はこの家にはお年寄りが一人か二人、あそこで寝ているのだなと考えます。ですから、少しもったいなくても、寝るまでは幾つか灯りをつけておく方がいいでしょう。

※この講演録は、学校法人日本福祉大学学園広報室が講演内容をもとに、要約、加筆・訂正のうえ、掲載しています。 このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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