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「ふくし」を思う

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講演録

文化講演会「パラリンピックと日本のふくし」藤田紀昭教授(日本福祉大学全学教育センター)

講演録「パラリンピックと日本のふくし」

  • 講師:
    藤田 紀昭教授(日本福祉大学全学教育センター)
  • 日時:
    2016年10月9日(日)

※所属や肩書は講演当時のものです。

1.パラリンピックの意味と意義

 パラリンピックは障害者スポーツの最高峰の大会です。第1回はローマ大会で、第2回が1964年の東京大会でした。当時は障害のある人がスポーツをすること自体が考えられない時代で、東京オリンピックのために作られたスポーツ振興法でも、障害のある人のスポーツについては一言も触れられていません。

 それが、50年たって2011年に制定されたスポーツ基本法には、障害のある人のスポーツが障害の程度や内容に合わせて振興されなければいけないという一言が入り、障害のある人のスポーツもかなり注目されるようになり、予算も付くようになりました。2012年にスポーツ基本計画が出され、2013年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、2014年に障害者スポーツのリハビリテーション以外の部分、例えばスポーツ振興や指導者の養成、普及、強化の所管が、厚生労働省から文部科学省に変わりました。2015年には文科省の中にスポーツ庁ができ、その中で障害者のスポーツも一体的に扱っていくことになりました。2011年から2015年は、障害者スポーツの激動の5年間といっても過言ではありません。

 「パラリンピック」という言葉は、日本のメディアが1964年の東京大会のときに付けたといわれています。「パラプレジア(対まひ)のオリンピック」という造語です。当時は脊髄損傷の人たちしか大会に出られなかったからです。今は、「パラレル(もう一つの)オリンピック」という意味合いに変わっています。

 リオデジャネイロパラリンピックには、159カ国、4000人以上の選手が参加しました。日本からは17競技、132人が参加し、銀メダル10個、銅メダル14個でした。メダルの数はこれまでで一番多かったのですが、金メダルはゼロだったので、国別では64位です。ただ、メダルを取るだけではなくて、別の価値がパラリンピックにはあります。

2.パラリンピックレガシー

 「レガシー」とは「遺産」です。パラリンピックが来ることで何が残るか。ネガティブかポジティブか、無形か有形か、計画的か偶発的かという三つの軸で分類してみました。

 レガシー類型①は、ポジティブ・計画的・有形のものです。ハード面のバリアフリー化の推進、アクセシビリティ・ガイドラインの策定と活用、パラリンピックの魅力を体感できるプログラムの展開、障害者スポーツやパラリンピックに理解の深いボランティアの育成、アール・ブリュットなど専門家ではない人の芸術作品の普及推進など、文化面での社会基盤の構築、情報のバリアフリーの推進、障害者スポーツの場の整備が挙げられます。ただし、国立競技場に代表されるように、箱物は維持費がかなり高いので、それをきちんと勘案しないとネガティブになり、負のレガシーになってしまいます。

レガシー類型②は、ポジティブ・計画的・無形のものです。障害者スポーツの普及啓発、人材育成、競技団体の強化、障害者スポーツやパラリンピックに理解の深いボランティアの育成と、障害のある人もない人もボランティアに参加しやすい環境づくり、オリンピック・パラリンピック教育を通じた障害者への理解促進と心のバリアフリー化です。今度改訂される学習指導要領には「パラリンピック」という言葉が入ってきますから、生徒に教えるためには、教師もパラリンピックのことをしっかり勉強しなくてはいけません。

 レガシー類型③は、ポジティブ・偶発的・無形のものです。これは、メディアによる障害者スポーツの認知度向上、障害者に対する意識の向上、障害者スポーツのイメージアップです。現状では、「パラリンピック」という言葉を知っている人は多いけれど、具体的な中身はほとんど知られていません。これが今後4年かけて、いろいろなメディアで報道されることによって変わってくることが期待されます。

 レガシー類型④は、ネガティブ・偶発的・無形です。オリンピック・パラリンピック終了後にスポーツ人口が減少するのではないか、イベントに対する予算が減少するのではないかなど、いろいろなことがいわれています。実際、ロンドンのパラリンピックは、過去最多の275万人が有料チケットを買って観て、いろいろなプラス面があったのですが、障害者に対する社会の姿勢は改善されていません。また、スポーツができる障害者とできない障害者の二極化が起こり、格差が拡大したという報告もあります。どうすれば障害のある人たち全てがスポーツのできる環境をつくっていけるかが、とても重要な課題なのです。

※この講演録は、学校法人日本福祉大学学園広報室が講演内容をもとに、要約、加筆・訂正のうえ、掲載しています。 このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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