第15回日本福祉大学夏季大学院公開ゼミナール
理論的フレームワークと
現場研究の視座
ソーシャルワーク領域を中心に

 日本福祉大学 夏季大学院公開ゼミナールでは毎年、様々な方向から「研究」についてアプローチするテーマを提示してきました。
 今年度は、研究者が自らの研究を追求するときに持たざるを得ない研究の理論的フレームワークとそこで問われる現場研究の視座に焦点を当てます。1日目の午前は、研究者がそれらをどのように考え苦闘しながら自分のものにしてきたのか、またそれが研究の実際にどのように影響していったのかについて、研究者としての自己分析を交えて語る企画です。取り上げる研究分野としては、ソーシャルワーク領域を中心に設定しました。
 1日目の午後は、研究構想に基づいて研究方法を選択する過程で生ずる疑問や問題、それらを解決するための理論的整理とその実際について、シンポジウム形式で検討します。
 また、夏季大学院公開ゼミナールでは「研究者としての自分史」を語っていただく時間を設けています。今年度は後藤澄江先生に、今回のテーマである理論的フレームワークをもとに、ご自分の研究展開をお話しいただくことにしました。

受付終了いたしました

日時
2019年
720日(土)・21日(日)
会場
日本福祉大学
名古屋キャンパス北館/南館

1日目 7月20日(土) 
10:20~17:00(9:50受付開始)

シンポジウムⅠ 10:30~12:30

「ソーシャルワークにおける現場研究の視座
研究者の自己分析から」

シンポジスト 小西 加保留 京都ノートルダム女子大学教授
シンポジスト 田中 千枝子 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・
社会福祉学部教授
コーディネーター 平野 隆之 日本福祉大学社会福祉学部教授

 ソーシャルワークは「実践の学」と言われます。その研究では、価値を基盤にした理論や知識の総合体である理論的枠組み(フレームワーク)と、そのベースにある視座・見え方とらえ方が重要です。
 実践と理論の関係は、現場研究として客観的に扱うことで、さらなる知見が生み出されます。そしてそれが次の実践に生かされ、新たな理論が構築されます。多くのソーシャルワーク研究は、現場における「理論と実践」の循環的相互作用性による研究として描くことができます。
 一方現場という研究環境は、研究者自身の主観のフィルターを通して現れます。つまり現場研究では、研究者自身の成長や変容によって、理論的枠組みの取り方や見え方の視座により大きく影響されます。
 本シンポジウムでは、長く実践現場に身を置いて、豊かな研究経験を持つ2名の研究者が、自己分析を踏まえて、自分自身の現場研究における理論的枠組みの変遷と視座のあり様を語ります。それによって現場研究と研究者との関係について、その意味や意義を考えることにしました。

シンポジウムⅡ 13:30~15:30

研究構想から研究方法の選択へ
理論はどこまで助けになるのか

シンポジスト 大谷 京子 日本福祉大学社会福祉学部教授
シンポジスト 末盛 慶 日本福祉大学社会福祉学部准教授
コーディネーター 後藤 澄江 日本福祉大学福祉経営学部教授

 研究を構想するには、まず研究したいテーマに対して様々な「問い」を思い浮かべ書き出し記述することから始まります。その問いの書き出しでは、理論的枠組みをおさえながら行うことは有力です。そしてその「問い」を研究の目的に照らし合わせて精選し、何らかの適切な「問い」を設定し論述するための調査研究を企画するにも、理論的枠組みを意識して行うことは効果的です。そのうえで調査のデータ収集と分析の方法の妥当性を課題に選択していくことになります。
  とくにその選択の過程で生じる研究者の逡巡・疑問や研究実施上の問題に対して、理論はどのような役割を果たすことができるのか。解決するための理論的整理とその実際について、シンポジウム形式で検討します。

研究者の語り 15:45~17:00

「研究をめぐる私の苦闘と喜び:
ケア労働の概念化と理論枠組みの導出と活用」

  後藤 澄江 日本福祉大学福祉経営学部教授

 私は子育て中に社会人院生として研究に着手しました。介護や子育ての実態や課題を担い手(提供者)の視点から分析できる理論を求めて、長く苦闘しました。家族役割分担論、家事労働論や福祉多元化論等の理論研究からの学びを踏まえ、「ケア労働(生命再生産労働)」という概念と理論枠組みを導出しました。日本福祉大学に赴任後には、それらの概念や枠組みをツールとして、家族内外での介護や子育てを対象とした調査研究を実施するとともに、それらをめぐる政策分析にも取り組んできました。これらの研究成果の一部は『ケア労働の配分と協働-高齢者介護と育児の福祉社会学』(東京大学出版会、2012)として出版しました。本講義では、実践や政策に貢献できる研究を進めるうえで、自分自身にとっての研究キーワードの概念化や理論枠組みを備えることの重要性をお伝えできたらと考えています。

2日目 7月21日(日) 
9:30~15:30

分科会 9:30~15:30

A分科会

「量的調査法への誘い
 -調査実施の依頼のプロセスと回収率向上の工夫」

  末盛 慶 日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科 准教授
  小沼 聖治 聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科 助教

 今回は、量的調査法の基本を説明しつつ、社会調査のテキストでは十分に解説されることが少ない調査実施の依頼のプロセスや回収率向上の工夫を取りあげます。
 午前の部では、量的調査に関する基本的部分と調査実施の依頼、回収率の向上について解説します。
 午後の部では、午前の内容を受けて、本大学院修士課程の修了生である小沼聖治氏の調査事例を紹介します。小沼氏の調査事例では、修士課程の中で、どのように研究テーマを設定し、質問紙を作成し、調査実施の依頼を行い、どのように回収したのか。そして回収率を向上させるためにどのような工夫を行ったのかについて、具体的な話をしていただく予定です。
 修士課程あるいは博士課程等で量的調査の実施をお考えの方、あるいは広く量的調査法にご関心のある方のお越しを心よりお待ちしております(※時間に余裕が生じれば、混合研究法についても扱う予定です)。

B分科会

「質的研究(調査)法への誘い 
-質的研究としてのGTAの考え方と分析手法-」

  田中 千枝子 日本福祉大学福祉社会開発研究所長・社会福祉学部教授
  山内 哲也 社会福祉法人武蔵野会 本部次長・
障害者支援施設「リアン文京」総括施設長
  鈴木 俊文 静岡県立大学短期大学部社会福祉学科 准教授
  谷岡 三千代 社会医療法人尾中病院 作業療法士

 本分科会では、質的研究(調査)法としてのグラウンデッド・セオリー・アプローチ (GTA)を概説し、質的研究法の活用に向けたデータ収集の考え方や方法、分析にあたって留意すべき点などについて学べるようにします。ここでは、GTAの一つである、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を活用し、インタビューデータの分析に関する演習も行います。
 本分科会は、日本福祉大学質的研究会が実施するプログラムの一環で、先に実施した「質的研究事始め」に続くものです。また11月9日(土)・.10日(日)には、「継続研修」として、2日間かけて、M-GTAによる分析と、関連図の作成、ストーリーラインまでを、教材(インタビューデータ)を使った演習(ワーク)を通して学ぶプログラムを用意しています。これら一連のプログラムを通じて、質的研究(調査)法への理解を深めるとともに、ご自身の研究への活用イメージと具体的な適用へのヒントが得られることと確信しています。
 なお、基本的知識に関する復習も行いますので、「質的研究事始め」に参加できなかった方も気後れすることなく参加していただければと思います。テキストとして『社会福祉・介護福祉の質的研究法-実践者のための現場研究』(田中千枝子、日本福祉大学質的研究会編、中央法規)を使いますので、ご参加の方は、事前にご精読願います。 

C分科会

組織学習としてのケースメソッドの可能性と課題

  竹内 伸一 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科 教授
  坂田 薫 京都民医連中央病院 看護部長
  橋本 節子 公益社団法人京都保健会 監事
  篠田 道子 日本福祉大学大学院 医療・福祉マネジメント研究科長

 マネジメント能力や連携力の向上にはケースメソッド教育が有効ですが、ケース教材の 作成など様々な舞台装置が必要なため、組織的な展開は容易なことではありません。本分科会では、ケースメソッド教育の組織導入実績が豊富な竹内伸一先生を迎え、教育学とマネジメント学の両面から医療・福祉分野におけるケースメソッドの実践法を紹介していただきます。
 京都民医連中央病院では、多職種参加型の管理者教育として、ケースメソッドを4年間実施しました。その取り組みと評価、この研修を受けた管理者がその後、どのような実践を行っているのかを報告します。
 また、ソーシャルワークの実践事例からケース教材への作成プロセス、人や組織をマネジメントする際に発生する課題の構造を理解し、解決に導く一連のプロセスを検討します。

D分科会

権利擁護支援とソーシャルワーク

  上田 晴男 日本福祉大学権利擁護研究センター研究員
  住田 敦子 NPO法人尾張東部成年後見センター長
  田中 千枝子 日本福祉大学福祉社会開発研究所長
・社会福祉学部教授(※部分参加)
  平野 隆之 日本福祉大学社会福祉学部教授

 権利擁護支援におけるソーシャルワーカーの役割を深めます。実践者が行う権利擁護支援の現場研究・実践研究を行う上で、ソーシャルワークの理論的フレームワークはどのように役立つのか、次の2つのテキスト作成の成果をもとに考えます。上田・小西・池田編(2019)『権利擁護とソーシャルワーク』(ミネルヴァ書房)、平野・田中・佐藤・上田・小西編(2018)『権利擁護がわかる意思決定支援』(ミネルヴァ書房)。今日、権利擁護支援に求められている「地域連携ネットワーク」をソーシャルワーカーはどのように組み立てることができるのか、そのための実践仮説には、どのような方法が考えられるのか。ミクロからメゾへの展開の枠組みについても考えます。

分科会まとめ 15:45~16:30

 分科会終了後会場を北館8階に移し、各分科会の成果を確認します。

参加申込方法

参加料金

4,500 円(2日間参加:1 日のみ3,000 円)
*本学院生・学生2,500 円(1 日のみでも)

※参加料金は事前にお振込みいただきます。お支払い済みの参加料金は、開催中止の場合以外、払い戻しはいたしません。

申し込み方法

以下の申し込みフォームからお申込みください。

受付終了いたしました

申し込み締切

2019年7月12日(金)

  • 申し込みフォームから申込完了後、入力いただいたアドレス宛にセミナー受付メールが届きます。
  • 参加料金は、セミナー受付メールに記載の口座に、7月16日(火)までにお振込みください。

個人情報の取り扱いについて

申し込み者の個人情報は、本セミナーの運営および本学が実施する各種講座などの案内に利用させていただくことがあります。
その他の目的には一切使用いたしません。

お願い

参加当日は、セミナー受付メールのコピーと参加料金の振込控えをご持参くださいますようお願いいたします。

問い合わせ先:平日10:00 ~ 17:00

日本福祉大学研究課
(夏季大学院公開ゼミナール事務局)

TEL:090-4855-3590
Email: kakidai_entry@ml.n-fukushi.ac.jp

会場のご案内

日本福祉大学名古屋キャンパス

〒460-0012
愛知県名古屋市中区千代田5-22-35

※会場に駐車場はございません。公共交通機関をご利用ください。

・JR「名古屋」駅より中央本線「中津川」行きに乗車「鶴舞」駅下車、徒歩2分。

・地下鉄「名古屋」駅より、東山線「伏見」駅乗り換え、鶴舞線「鶴舞」駅下車、徒歩2分。