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研究課題名 能動触による図形認知特性の実験心理学的分析
−視覚障害者向け触図作成ガイドライン構築−
研究者名(所属および資格) 中村 信次 (情報社会科学部 助教授)
久世 淳子 (日本福祉大学情報社会科学部 助教授)
尾形 真樹 (東京ライトハウス)

研究成果概要

 視覚障害者に特定の場所の空間情報を提供可能な触地図の作成において、その場所がどのような場所であるかを観察者に伝達する触マークは、特に非点字識別者にとっては、非常に重要な空間認識手がかりとなる。そこで本研究では、能動触を用いた触マーク認識に関する心理物理学的実験を行い、識別が容易で誤認識の少ない触マーク作成のためのガイドラインの策定を行うこととする。今年度は、研究計画の初年度に当たり、晴眼者にアイマスクを装着させ、擬似的に視覚情報が利用できない場面での触マーク識別実験を行った。なお触マークの作成に当たっては立体コピー機(Minolta PartnerVision2051)および立体コピー現像機(松本興産)を用い、触マークは70×98oのカードに、背景から約1o浮き上がる形で現像された。被験者7名(すべて大学生)を用いた実験の結果、以下のことが明らかとされた。

 1)24ポイント(約7o四方)以上の大きさであればアルファベットの識別は概略可能であった 
  (正答率約65%、チャンスレベル3.7%) 
 2)フォント形状(今回の実験では、Arial,Sanserif,Times,Verdanaの4種を利用)によって全体
  的な正答率はあまり変化しなかった。しかしながらフォント末端の飾りひげのないVerdanaの
  正答率が他のフォントに比較して若干低くなる傾向が認められた
 3)各フォント形状によって、誤認識されやすい文字の対が存在した。たとえばArialではBとE
  が混同されやすく(混同率28.6%)、SanserifではHとNが混同されやすい(混同率57.1%)
 4)基本的なパターンの差異(□、△、○、☆)の識別は、24ポイントの大きさの条件でもほぼ
  100%であった。
 5)同心円様のパターンを用いた記号(◎など)の正答率が極端に低くなった。
 
 今後は、さらに種類の異なる触図形の識別実験を重ねるとともに、視覚障害者のデータも追加し、それらの結果から、識別しやすい触マークが備えるべき特性のガイドラインの策定を行う。

研究成果発表
さらに実験を重ね、来年度の情報社会科学論集へ投稿を行う。
関連リンクなど
 

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University