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研究課題名 開発途上国での医学用地理情報システム普及の試みと
その問題点の抽出
−スリランカ・ゴール地区をモデル地域として−
研究者名(所属および資格)

磯貝芳徳 (日本福祉大学 情報社会科学部 教授)
木村英作 (愛知医科大学 医学部 教授)
Mirani V. Weerasooriya (University of Ruhuna Faculty of Medicine Professor)


研究成果概要

[目的]
開発途上国(本研究ではフィールドをスリランカに限定)の医学研究者,医療従事者,医療行政機関を対象に,地理情報システムに習熟したスタッフを養成し,同システムの普及を図る。具体的にはスリランカのGalle District でのフィラリア症感染者の分布調査を現地の寄生虫学者と協働で遂行し,このデータの蓄積,分析手段として地理情報システムを用い,同システムの有効性とその使い方を現地の寄生虫学者に学んでもらう。この活動を通じて,開発途上国の,寄生虫学に留まらず,医学の様々な分野へ地理情報システムが普及していく素地を作る。

[2003年度の活動経過と成果]
1)WHOが製作し,無償で提供している地理情報システム Health Mapper の機能の調査を行った。当システムには地理図形情報のベクトル化機能が無いことが判明した。すなわち同システムが提供するベクトル情報に使用者のデータを載せる機能が中心となっており,我々の目的のためには機能的に不十分であることが分かった。
2)米国製の地理情報システムTNTmipsを用い,我々のフィールドのベクトル図形を作成し,これを Health Mapper に取り込み,以降の分析を行う方向へ戦術を転換することとした。
3)2003年2月17日より26日までスリランカに出張し,フィラリア症感染者の分布調査の詳細な打ち合わせを行った。同時に,Ruhuna大学の Dr. Thishan Channa Yahathugoda を中心とする若手研究者を対象として,地理情報システム(TNTmips)についての基礎的な講義と,同システムの操作法に関する基礎の実習を行った。スリランカの Galle 及び Humbantota Districts の保健衛生行政地図のベクトル化を彼らの手で実施することを約して帰国した。
4)彼らのベクトル化作業が終わるまでの1年間,TNTmipsソフト貸与することとした。開発途上国で高価な地理情報システムを活用することの困難さの一端を実感した。

[次年度以降に残された課題]
1)フィラリア症感染者の分布データの収集と,Galle 及び Humbantota Districts のベクトル化地図の完成を目指す。この間,e-mailを用いた日本からの指導・支援を行う。
2)感染者の分布データを地理情報システムのデータベースに取り込み,地図情報との連結を行い,本格的な分析作業を行う。これらの作業を通じて,スリランカの若手研究者の地理情報システム活用能力の向上を目指す。

研究成果発表
2004年度には上記の研究成果をしかるべき学会誌に発表する予定
関連リンクなど
 

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University