里山環境の変化が生物多様性に及ぼす影響(続編)

研究代表者:福田 秀志(情報社会科学部助教授)
研究協力者:木下 晃彦(広島大学大学院生物圏科学研究科)

 

1.はじめに

 近年,「里山」保護の重要性が叫ばれている.その大きな理由は,里山の環境が最近まで普通に見られた生物の生息場所になっていることがわかってきたためである.しかし,里山環境の変化が,そこに生息する生物相にどのような影響を与えるのかについて,定量的に調査した研究は少ない.本研究は,「里山環境の変化が生物多様性に及ぼす影響」というテーマで,2000年度から2001年度にかけて行われたものである.昨年の報告では,知多半島にある里山の雑木林を対象として,ヒトが手を入れて管理している雑木林と,放置された雑木林の植生およびそこに生息する昆虫相の違いについての調査結果を報告した.本報告では,同一調査地で行ってきた微生物(キノコ相)調査の結果を報告する.
 なお,本研究費の一部は,日本福祉大学情報社会システム研究所研究費によった.

2.調査方法

 管理された雑木林として,愛知県東浦町にある高根の森を,放置された雑木林として,日本福祉大学半田キャンパス近くの,のぞみヶ丘にある雑木林(以下 のぞみヶ丘)を調査地として設定した.各調査地内において,10m×10mのプロットを設置し,さらにそのプロットを2m×2mの小プロットに区切った.その後,各プロットにおいて雑木林環境とキノコ相の調査をおこなった.



植生について,樹種,胸高直径,樹高,立木位置を記録した.また,外生菌根を形成すると考えられる樹種(菌根形成樹種)については,根の広がりを枝の水平方向の広がり(樹冠)から推定した.倒木が地面を覆う様子について,倒木の樹種,数を数えるとともに,その様子を観察した.相対照度の測定は,2001年10月におこなった.各プロット内の25個の小プロットにおいて,魚眼レンズを装着したデジタルカメラによって全天空写真を撮影し,全天空画像から測定点(林床部)における1ヶ月(10月)あたりの光合成有効放射量の相対値(相対照度)をコンピュータソフトLIA32 for Windowsを用いて算出した.さらに,各調査地内の土壌環境を明らかにするために,プロット内において堆積腐植物層の厚さ,土壌含水比の測定をおこなった.
一方,キノコ相調査は,2001年6月7日から11月12日にかけて合計17回おこなった.キノコは降雨後に多くの発生がみられるため,調査は降雨日の翌日,もしくは翌々日におこなった.各プロット内において,発生したキノコをすべて採集した.また,採集したキノコは研究室に持ち帰り,種の同定をおこなった.このようにして採集日ごとに種,発生場所,発生本数を記録した.

 

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写真-2 落葉分解菌の一種「スジオチバタケ」

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University