4. モバイル情報環境に望まれる要件
 現在, 社会福祉協議会, 市役所福祉部, 在宅介護支援センターにおいて, 「高浜市地域福祉情報システム」 が稼動中であり, 現在の各サブシステムの機能を生かす方向で, 新しいモバイル情報環境を構築する. そのための前提条件としては, 以下の項目が考えられる.

  1. 操作についてはできるだけ変更をしない
  2. 開発中のレセプトシステム (介護給付請求処理・利用者計画作成) のデータと相互性を持たせる
  3. ヘルパー等の入力者の操作ミスをできるだけ未然に防ぐ
  4. 業務的な負担をできるだけ軽減する
  5. 本システムの開発コストを最小限にとどめる
  6. モバイルには, 必要な情報だけを搭載する

  現在, 稼動中の地域福祉情報システムの中のサブシステムである 「レセプトシステム」 では, 下記の機能が用意されている. このシステムとモバイルが協調してデータの整合性を保つようにするのが目標である.

  1. ケアマネージャ向け

  • 週間スケジュール作成・管理
  • サービス利用票・提供票の作成および管理(月間スケジュール)
  • サービス提供票のデータ交換
  • 給付管理票の作成
  • 介護給付費請求書の作成・データ出力

2. サービス事業者向け

  • サービス提供票のデータ交換
  • 介護給付費請求書の作成・データ出力

   これらの情報を生かすことで, ヘルパーの活動記録に関する業務負担を軽減できると想定している.

 


5. システムの開発
 Palm Computing Platform 上のアプリケーションを簡単に構築するための RAD (Rapid Application Development) ツールとして, Satellite Forms (TM) が有効である. 本事業でもこの開発ツールを採用する. プログラミング経験の少ない SE でも簡単に Palm 上で走るアプリケーションがすぐに開発でき, またその Palm アプリケーション上のデータを, 組織内で使われる Oracle, Microsoft Access, Lotus Notes などのデータベースと連携させる事ができる.
 Palm 上のアプリケーションを開発するためのツール App Designer は, 標準で用意されているボタンを任意の場所に配置し, メニューを選択していく事により, 様々なアプリケーションを作成する事ができる. データ構造の定義も容易に行うことができ, ユーザーインターフェースを提供するフォームのデザインも簡単に作成することができるので, シンプルなアプリケーションであれば, プロトタイピングは数時間で終了, すぐにテスト段階に移行できる. また, アプリケーションの開発だけではなく, その後の維持・更新も簡単に行えるので, Palm 専任のプログラマーを配置することなく様々な分野でのソリューションビジネスを迅速に展開することが可能となっている.
 ペン入力タイプの端末の欠点である文字入力の煩雑さも, ドロップリスト, データ選択・フィルター機能, テーブルの関連付けなどを使えば, ペン・クリックだけで操作できるアプリケーションを簡単に作成できる. このため, パソコンを使った経験の少ないユーザーでも抵抗無く使用できるアプリケーションを開発することができる.
 Satellite Forms の App Designer を使って, Palm 上で持つべきデータ構造をテーブルの形で定義する. テーブルには, 文字, 数値, 日付, 時間, 手書き文字などのデータがカラム毎の混在することができる. このテーブルはいくつ作っても構わない.
 次に, ユーザーインターフェースの部分となるフォームを作成する. フォームには, Satellite Forms の提供するコントロールやマクロを使っていろいろな機能を貼り付けていくことができる. また, より高度な機能が必要な場合は, Satellite Forms の提供する Visual Basic の似た形を持つスクリプト言語を使って自分なりの機能を作成できる. 作成したフォームやテーブルを Palm にダウンロードするだけで, 直ちにアプリケーションが Palm の上で実行されることになる. 

構築したモバイル情報環境の画面の遷移はヘルパーのワークフローに応じて以下の図のようになる.

図3 画面の遷移