3 . 研究の手法
 本研究は情報通信機器の中から, インターネット上に Web コミュニティと呼ばれる会員間電子掲示板・メールシステムを取りあげる. そこまでならば, 既存の BBS 等と同様であるが, さらに, 人のつきあいに関する客観性の高いデータ収集を行う機能を追加してある.
 また, 被験者のプライバシーに配慮し収集データと個人情報は切り離して分析ができるよう工夫してある. そのことがより客観性の高い分析を可能にする.
 この機能を生かし, 特定の範囲を対象にして詳細なデータに基づいて社会的ネットワーク形成のプロセスを把握する. 情報通信機器によって形成されたつながりが現実社会の人間関係にどのように展開するかを追跡しアンケートと聞き取り調査を行い, 社会的ネットワークの動きに関わる諸要素とメカニズムを明らかにする.
 先行研究として, 昨年度日本福祉大学の学生を対象にして試作システムのテストおよび実験方法の検討を行った. その結果から, 実験用システムの大幅な改良と, 実験方法の再検討, および十分な実験期間の確保が課題であることが分かっている.
 本研究では, 実験用システムの大幅な改良, 実験方法の再検討など実験開始までの準備を入念に行い, 9 ケ月以上の実験期間を設け, データ収集に努める. また, 追跡調査も行う予定である.

4 . 研究の進捗
理論の構築
 理論の構築は, 陳の論文と小島の修士論文をベースに再検討をおこなった. 内容は 2002 年日本福祉大学情報社会科学論集に掲載予定である.
実験システムの構築
 実験システムは, 小島の修士論文の際に試作したシステムとテスト結果をもとに, 一から作り直した. より実験に参加してもらいやすく, プライバシーに配慮したカタチを目指した. また運用面でも長期運用が可能になるよう, スタッフの体制づくりや, 不正侵入や個人情報流出のないようセキュリティ対策にも力を入れた. 現在 5 ヶ月以上の稼動テスト中であり, 実験開始に備えている.

 



参加者の募集
 本実験では大阪駅まで約 1 時間以内の大学と短期大学の参加を呼びかけ, Web コミュニティを構築し, 9 ケ月以上稼動させることにした. そこで発生する行動記録を踏まえ, 参加者のその後の現実社会でコミュニケーションについて追跡調査を行い, 情報通信機器によるコミュニケーション行動が現実社会に与える影響を探る.
 すでに桃山学院大学, プール学院大学など数大学に実験参加の依頼状とポスターの配布をし, 今年度中に約 50 大学および短期大学を回る予定である.

  5 . 今後の方向
データの収集
 新学期がはじまった頃から, 実験を開始しデータの収集を行う. 3 ヶ月ごとにオフラインミーティングを行い, 会員 (被験者) 同士が実際に顔を合わせる機会を設ける. 9 ヶ月の期間コミュニティを稼動させる予定である.
データの分析
 稼動させつつ, 平行して収集したデータの解析を行う. その中から, 追跡調査をする人を選び出し, アンケートや聞き取り調査も行う.

 

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