トヨタのワゴン車に,OMM−2001−NIRS装置(近赤外線スペクトロスコピー装置)を積み込んで,運転中の前頭葉の活動状態を調べた.得られた成果については,トヨタ自動車株式会社との共同研究の制約上,実験の概要の紹介にとどめる.今後,共同研究機関間の了解のもとに研究成果を原著論文として発表することになる.
実験は,以下の運転条件で,前頭葉のどこがどのように働くかを調べた.
単純運転 単純な自動車運転で働く,前頭葉諸領域を決めたスタートする時,右前頭連野が働き,ストップするときは補足運動野が働く.
複雑運転 (T字路運転と三叉路運転) ゴールへ向かっての運転で,左曲がり,右曲がりの交差運転を含めた.
T字路運転 スタート直前に左右のゴールの地点を覚えてスタートして,信号を見てT字路で交差してゴールへ至る(空間的ワーキングメモリー)課題と,ただスタートして,信号を見てゴール地点の指示を得て交差する(非空間的ワーキングメモリー)課題をおこなう.スタート期の活動を両課題でくらべると,右ゴールを覚えている時には右前頭連合野と左補足運動野,左ゴールを覚えている時には左補足運動野が良く働いた(8人の平均).ゴール地点を覚えておいて運転する時,前頭連合野と補足運動野にゴール地点を記憶している活動がある.この結果,T字路運転は,ワーキングメモリー課題といえる.
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三叉路運転 三叉路(日本福祉大学の美浜キャンパスで,実際に使用されている三叉路)の運転で,場所の記憶がどのように保持されるかを調べた.前頭連合野の前内側部(上前頭回,ブロードマンの9野と10野)に保持される傾向のあることがわかった.このことを2004年北米の神経科学会(Soc.
for Neuroscience)の年次大会で報告した.
歩行者(人形)飛び出し実験 歩行者(人形)飛び出し実験で運転時の注意のメカニズムを調べようとした.運転をスタートした直後,人形を飛び出させ,急停止または,避けて運転を続けさせた.スタート直前に人形が飛び出してくるかどうかわからない場合(注意運転)と人形が飛び出してこない場合(不注意運転)とで前頭葉の働きを調べた(13人の被験者).注意運転で,右の前頭連合野の前内領域(上内前頭回,ブロードマンの9野と10野)が働くことが示された.
単純運転と単純歩行の比較 単純な歩行と単純な運転で,前頭連合野の働きがどう違うかを調べた.歩行時,右の前頭連合野の前内側部(上内前頭回)と左補足運動野が,運転時より,よく働いた.
2004年10月,San
Diego, CAで開かれたSoc. for Neuroscienceの第34回年次大会で2題ポスター発表をおこなったので,その抄録を添付する.
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