◆View Point◆

 

 都市再生。 この言葉が聴かれるようになってすでに久しい。 名古屋でも名駅周辺などが都市再生緊急指定地域に指定された。 豊田毎日ビルをはじめ何本か超高層ビルの計画があり、 インテリジェント化されたオフィスやホテル、 大学、 ショッピング街、 文化施設などが詰め込まれようとしている。 都市を再生させるエネルギーは依然としてこうした 「機能」 にあると思われているようだ。
 一方この夏訪れたスペインにおける、 都市再生プロジェクトには、 「アミューズメント」 というキーワードを見た。 ビルバオの川沿いの工場跡地にはグッゲンハイム・ビルバオ美術館、 バレンシアの街のフリンジには科学博物館が近年オープンした。 何れも文化施設ではあるが、 その建築も展示の内容もわかりやすく、 大げさで、 屈託がなく、 手が込んでいて、 単純に楽しい。 特に建築デザインが果たしている役割は大きく、 ビルバオのフランク・O・ゲーリー、 バレンシアの S・カラトラバのデザインは、 ハリボテだの非効率だのという玄人の批判はあるものの、 そこにはやはり卓越した個人の才能が花開いている。 老若男女、 多くの人々が訪れ、 その表情は皆明るい。 ものではなく意味の生産が産業となったこの情報化時代において、 人々に消費されるのは 「機能」 というよりも 「表現」 なのだ。 こうした文化表現による都市再生戦略を、 ディズニーランドの浅薄なアミューズメントパークとは峻別したうえで、 日本でも学ぶ必要があるだろう。 もちろん、 闘牛やフラメンコの洗練された 「エンターテイメント」 との埋めがたい差をもわすれずに。 (F.S.)

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