JAM SESSION
STAGE 5

 ゲスト 中部リサイクル運動市民の会 代表 荻原 喜之 氏

聞き手 日本福祉大学 情報社会科学部助教授 佐々木 葉

 JAM SESSION 第5回のゲストは「中部リサイクル運動市民の会」代表として、環境問題を中心とする諸活動を始め、幅広くご活躍の萩原喜之さんです.

   
萩原喜之・はぎわらよしゆき
萩原喜之・はぎわら・よしゆき 名城大学第一理工学部交通機械学科中退.
中部リサイクル運動市民の会代表として,中部地区のリサイクル,市民運動をリードし,その活動範囲は全国,海外にも及ぶ.愛知県「環境保全特別功労」賞他,数々の賞を受賞.今年開かれたハノーバー万博では日本から唯一,関連プロジェクトとして出展招待された.

 
◎リサイクル運動の始まり◎

● 佐々木
今日はお忙しいところありがとうございます.このところ新聞などでもよくお顔を拝見しますね.個人的には博覧会の関係でかなりしばしばお会いするようになって,もう1 年以上経ちますが,改めて今日は,「中部リサイクル運動市民の会」代表の萩原さんとしてお話をお聞かせください.まず,その設立の経緯からお願いできますか.

● 萩原
設立が1980 年,ちょうど20 年前です.その前は僕は中部建築ジャーナルという建築系の雑誌出版の会社にいたんですが,アフターファイブで「ロック歌舞伎」につき合っていて….

● 佐々木すみません,「ロック歌舞伎」って,名前は聞いているんですが良く知らないんです.

● 萩原
あ,そうか.もともとこの地域の,どっちかいうと前衛文化運動のはしりをやっていたグループで,美術館にごみをぶちまけたりとか,ストリートパフォーマンスだとかをやっていた人たちが,歌舞伎の所作は表現としておもしろいというので,歌舞伎に入っていって,でも下座音楽はロックということをやっていたんです.




それに僕もつき合っていて,そのうち下呂の田舎芝居に合流してそこで田舎暮らしをしながら芝居をやる生活の話が持ち上がってきた.結局その話はなくなったんだけれども,僕も会社にはやめるといってあったし,27 歳でしょう,雑誌の仕事も別に好きで入ったわけではなくて生活のためにしていた仕事だから何か次の仕事を探さなきゃ,というアンテナを張っていたわけです.そのときに,「東京と大阪にリサイクル運動というのがある」というニュースを通勤途中の車の中で聞いたら,それが引っかかっちゃったんですね.すぐ車を止めて,電車賃が安い大阪の電話番号を辛うじて覚えて電話をしたら,「じゃあ,すぐおいでよ」ということで会いに行った.
「リサイクル」というのは,その当時,日本の国語辞典に載ってないくらい新しい言葉で,第二次オイルショックの後に工学博士の糸川英夫さんが提唱した工学用語なんです.東京で始まったリサイクル運動というのは,その新しい言葉を新しい運動にぶつけた非常にトレンディーな名前だったらしいです.
そこの動きを察知して,神戸の若者が神戸祭りを機にスタートさせて,それから大阪に移り,「長髪の若者がもったいない運動」というミスマッチが受けて勢いづいていた.今までにない,非常に新鮮な運動だったということです.僕が行ったときの感覚は,デザイン事務所と大学祭の実行委員会の事務所が合わさったような,全く市民運動の匂いがしないものでした.そこで話をしてからしばらく考えて,食べることは何とかなるだろうから,ちょっと自分のおもしろいと思ったことを表現してみようかなということで始めた.だから,本来は就職をするつもりで探していたのが,引っかかっちゃったのが市民運動,しかも環境問題だったという偶然なんです.

● 佐々木
市民運動や環境問題という問題意識があって始めたわけではないんですか.

佐々木 葉・ささき よう
東京工業大学大学院総合理工学研究科前期博士課 程修了
工学博士(東京大学)
情報社会科学部 助教授
専攻は都市景観論、景観デザイン

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