図3 :角閃石片岩−富山県黒部市(画面の横幅は約1.2 ・)
 

はじめて偏光顕微鏡下で薄片を観察した人はその色彩の多様さ,鉱物組み合わせの組織の複雑さ,そして,右や左に回転するにしたがって色や明度が変わる鏡下の状景に驚く.
 観察記録として,これまで,フィルムを収めたカメラを鏡筒にとりつけ,写真を撮る方法が用いられてきた.観察した結果をスケッチして残す方法に比べると,その方が手早く,正確であった.しかし,写真撮影は,実際にフィルムを現像してみないと結果がわからない.この種の画像は,露出時間とピントの2 つが常に問題となる.これまでは,それら条件を微妙に変えながら,何回もシャッターをきっていた.それでも結果がすぐには分からないので,いつも不安があった.最近,顕微鏡に取りつけるデジタルカメラが開発され,これで撮った画像をパソコンに画像データとして残す方法が用いられるようになった.モニターを見ながら,シャッターを切るので,作業はしやすくなった.どのような画像ができるかについての不安もなくなった.
 ちょっと,技術的な問題に触れておこう.デジタルカメラで撮影された映像はそのままモニターやパソコンのディスプレイの画面に映し出される.カメラの受光部もディスプレイの画面も,微小な感光素子や画素が縦横の枠内にビッシリと並んでいる.

 

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図4 :砂岩−愛知県渥美郡渥美町(画面の横幅は約1.2 ・)
 

 カメラやディスプレイの画面には,このマトリクスによって定められた方向性がある.一方,顕微鏡下で観察した像はふつう円形に見える.この円形にも厳密に定義された方向性がある.顕微鏡に取り付けられた上述の偏光板の振動方向がそれである.一般に,下側に取り付けた偏光板の振動方向をこの円形画面の上下(Y 軸)方向,そして,上側に取り付けた偏光板の振動方向を画面の左右(X 軸)方向になるように顕微鏡は調整されている.シャッターを押すことにより,鏡下の円形の画面から,デジタルカメラが矩形(一般には横長)の画面を切り取り,それを記録する.撮影に先だって,円形の画像について定められているXY の方向が矩形画面の縦横の方向に一致するように調整しておかねばならない.鉱物の光学的性質は方向によって著しく変わるからである.図1 −図4 の方向は,このようにして決められている.
 いかなる岩石がどこにあるか,そして,それはどのような性質をもっているかということは学問的には研究の基礎データとして,また,社会的には国土情報として,きわめて重要である.それをわかりやすく,具体的にまとめる計画として,岩石薄片の顕微鏡写真を画像データベース化することが考えられている.デジタルカメラによる記録法とその画像処理はその第一歩である.

 

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