JAM SESSION
STAGE 4

● 佐々木
私と鯉江さんが最初にお会いしたのは,常滑の青 年会議所が主催するシンポジウムの打ち合わせだっ たわけですが,そのときたまたま私が持っていた 「知多名所図絵」などから急に話がもりあがって, これは面白い人がいる,ということで空港関連のラ ンドスケープデザインの仕事に引っ張りこんでしま い,それから何かにつけて遊びに来るということに なってしまったわけですが,改めてガイアのお仕事 を簡単にご説明いただけますか?

場所の気象から発想する
  ランドスケープデザイン

● 鯉江
ガイアというのは,もともと主に造園の設計や施 工をしている僕の友達の会社で,その海版をいっしょ にやることになったわけです.特に海岸線の計画や あちこちの公園設計などをやっています.

● 佐々木
大まかにいえばランドスケープのデザインやその ための調査ということですね.鯉江さんのお仕事を 拝見していて非常に惹かれるのは,気象や地形といっ たその場所の物理的な特性からすべて発想していく というところです.そういうことは本来とても大事 なはずなのに,なぜか見落とされてきた.こういう アプローチは,やはりこの場所の厳しい気象との付 き合いから生まれたものですか?

● 鯉江
僕も最初はここの気象が特殊だという意識は全然 なかったんですけど,やっぱりサーフィンをしたり, 海関係の仕事をしながらあちこち行きますよね.そ うしますと,海辺の大都市というのはどういう環境 条件のところに多いのかとか,伊豆半島では西海岸 には大きな町が少なくて東海岸に集中しているのは なぜかだとか,いろいろ見ながら考えるわけです. またその場所ごとに波や風を体験してきて,それで こちらに帰って海辺に拠点を置いたときに,冬の風 がものすごく強い場所だなと気づいたわけです. 風が強いということは,我々にとっては波が起きたり, セーリングするには非常にいい条件なのですが,人 が住むには決して適していない.

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その辺から,町の 発展と気象条件や地形の条件が非常に強く関係して いるなということが実感となって,発想のベースに なっているわけなんですね.知多半島のある伊勢湾 は,本州中部の一番幅の狭いところに面しています. 太平洋岸で内海だから一般的には温暖だと言われて います.しかし,伊吹おろしと言われる冬の風が日 本海から直接吹き抜けていくし,伊良湖水道から太 平洋と連動した外洋からのうねりの影響も受けるわ けです.

● 佐々木
私も鯉江さんに言われるまで,ここが本州中央で 一番細いところだなんて考えても見ませんでした.

● 鯉江
若狭湾からこのあたりが谷間になっているもので すから,冬に北西の風が吹き抜けます.しかも木曽 三川があって,雨が降ればそこから土砂が伊勢湾に 流入し,それがまた波によって運ばれてくる.こう した風や水の流れによって知多半島の海岸線が形成 されたり,さらには町の発展が影響を受けるわけで, 環境と密接な関係にあるわけです.

● 佐々木
私も景観デザインの仕事をやるなかで,太陽のこ とは常に気にかけていましたが,風は忘れがちでし た.でも風が変われば植物も変わるし,土も変わる. 当然人の快適性も変わるということを,丁寧にデザ インに取り込んでいくことの面白さと大切さを鯉江 さんにリアルに教えていただきました.いわれてみ れば当たり前のことなのですが,それを忘れていた ために結構失敗しているデザインもありますでしょ う?

● 鯉江
都市臨海部の開発は,非常に人工的な場所のよう に思われますが,実際に行ってみると自然の条件は やはり厳しい.夏は夏で外気温が30 数度あったり, 風で砂やしぶきが飛んできたりするわけで,パッと 見た目はいいんだけど,そこに身を置くととても人 が来やすい環境になっていないことも多い.我々は こういう海辺だとか自然の中で生活しながら仕事を しているわけで,自然をちゃんと把握しておかない とひどい目に遭うことをよく知っているわけですよ.

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