折り畳みができる車椅子の前輪フレームに, 出し入れができるスライド式取っ手を取付けた. 折り畳んだ状態でこのスライド式取っ手を引き出して4輪走行 (車椅子の前方2輪は内輪であり, キャリアカートの際は補助輪となる. 補助輪の機能は丁度大型トラックの二重タイヤに似た構成となっている.) が可能なキャリアカートが実現できる. 従来のキャリアカートは2輪走行であり, でこぼこ道とか芝生などを引っ張って移動が困難だったのに対し, この4輪走行はストレスなしで苦も無く芝生などの上を引いて歩行することができる.
 図1は本研究で試作した車椅子の車椅子の状態を示す. 図2はそれを折り畳みキャリアカートの状態にした写真を示す.
 図を参考にして例えば高齢者が1人で買い物に出かける場合を想定してみよう. 一般に高齢者が買い物をするとき, 重いものを長時間に亘って持つことはかなりの苦痛を伴う. この車椅子は折り畳み式のカートの機能を有しているので, 買い物の品 (例えば生活の必需品である米 10 kg程度) をカートに積むことで高齢者は楽な移動ができる. 買い物で体が疲れたときには車椅子に変更し座って休息したり, 介護人に押してもらうことで多目的に車椅子の使用を可能としている.
 上述した2社の車椅子に見られるように従来の折り畳み車椅子は折り畳む行為は収納が目的であったため, 本車椅子のように, 折り畳んだ後の利用は全く不可能であった. その意味で我々が提案した車椅子は多目的車椅子と呼称し, かつ, これまでの車椅子とは性質のかなり異なるものである.


今後の技術的問題点, 改良点として,
1. プロトタイプはワンタッチ式でないので, 完成機では高齢者がもっと負担にならないワンタッチ方式を採用する.

2. 構成材料の材質と全 体重量からの追及.

3. フィールドテストの 実施.

 などが挙げられる.

 このうち2の材質は, 軽量化につながる問題であり, 開発する過程では熔接などの問題もあり重視したい. また, 全体重量については3kg以内を目標にしたい. これは上述した日進医療器(株)と(株)フジワラの車椅子が2つとも 5.5kgであるので, それと比べて算出した目標値である. 参考までに現在のプロトタイプを実測した結果, 全体重量は 2.8kgであった.
 3のフィールドテストで, 最も問題なのは安全性と耐久性である. 車輪をどのようなものを採用するのか, キャスターはどうしたらよいかも含めてさらに詳しく検討する必要もあろう.
 高齢者が楽しい一時を過ごすのに老人クラブ主催のピクニック, ゲートボールなどヘの参加がある. 本車椅子は折り畳み時に傘とゲートボールのパターステッキなどを収容できる構成をとっており, ますますの多目的性を本車椅子に所持させる設計も早急に始めるとともに実機開発に向けてさらに改良を進めてゆく予定である.
 本研究は日本福祉大学情報社会システム研究所の福祉機器グループの 1996 年度の予算面でのサポートを受けて行われたものである. (特許出願中)

【引用文献】 1)大橋力:``情報環境学", 浅倉書店 (1989).
2)山羽和夫:愛知在宅介護機器・住宅研究会資料 (1996).