プログラムの概要 |
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日本福祉大学の取組テーマ 『福祉人材を育成するeラーニングプログラム−これからの養護学校教諭に求められる能力育成を目指して−』 |
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本取組では、福祉の基本的知識・理解に加え実践力を伴った福祉人材を育成するための総合的なeラーニングプログラムを開発する。広範囲の福祉人材育成を目指すが、文部科学大臣の諮問に応え中央教育審議会が提起している特別支援学校教諭育成という政策課題を見据えつつ、当面、その柱となる養護学校向け人材育成のためのプログラムを整備する。@養護学校教諭免許状の取得に必要な科目のオンデマンドコンテンツによる学習、A実習及び地域と本学を結ぶオンライン上のコミュニティへの主体的な参加、Bコミュニティへの参加を通じて蓄積されるコンテンツによる知識の再構築、という一連の学習プロセスにおいて活用できるeラーニングプログラムとし、「循環再生産型の学習スタイル」を確立する。本学習スタイルは汎用的に適用可能であり、養護学校教諭育成において効果を確認の上、他の福祉分野の人材育成用プログラムの整備へ展開していきたいと考えている。
1.取組の背景 福祉サービスは、障害のある人が、いわゆる健常者と同様に自立した個人として生きていくための「支援」と捉えられるようになっている。生活スタイルが多様化する中、福祉において適切な「支援」を提供するためには、現場を知り、個の状況を正確に把握した上で適切なサービスを考えることができる、いわゆる「実践力」のある人材が必要である。特に養護学校では、児童生徒数は増加傾向にありながら、一方で養護学校教諭免許状を保有する教員が半数以下であるなど、人材育成に対するニーズは高い(【資料1】)。中央教育審議会における特殊教育免許の総合化に係わる検討(【資料2】)において、より多くの大学に養護学校教諭養成課程を設置する必要性が指摘されるなど、養護学校教諭育成に対するニーズは今後も増え続けることが予想される。
【資料1】特殊学級設置校数及び担当教員数
(資料出所:文部科学省 中央教育審議会 特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)参考資料 「特殊学級、通級による指導の現状」の2.特殊学級設置校数及び担当教員数より抜粋)
大学における養護学校教諭育成課程にも改善の余地がある。本学では養護学校教職課程を持つ社会福祉学部社会福祉学科の科目履修となるが、いつでもどこでも学習可能なeラーニング講座を設けることで、他学部・他学科からの選択も容易となり、履修者の増加が期待される。実習やボランティア活動を重視している本学にとって、その時間を保証するためのカリキュラム編成は大きな課題の1つであり、eラーニング講座設置による改善を検討している。また中央教育審議会の検討において課外での実践機会の確保の必要性が指摘されているように、実習先の確保、実践力育成を支援する組織・システムの整備も課題である。多忙な福祉現場における貴重な指導から得られるものは多く、その成果を現場に還元するとともに次年度以降の学生実習や他大学の学生教育へ反映していく必要もあろう。
2.取組の目的及び大学の理念との連関性 本取組では、知識・理解に実践力を伴った福祉人材を育成すること、中でも急務である養護学校教諭を育成することを目的とする。「万人の福祉のために、真実と慈愛と献身を」を教育標語として掲げる本学にとって、諸科学を誠実に学び、深い人間愛をもとに、生きた実践能力を発揮できる人材を育成することは、教学の理念の具体化である。社会福祉士国家試験現役合格者数(通学制)は制度発足当初から全国一のレベルにあり、養護学校教諭免許状取得者も多く(【資料4】@)、卒業生の多くを福祉現場に輩出している(【資料4】A)本学として、現場ニーズにもとづく養護学校教諭課程の見直し(特殊教育免許の総合化)にいち早く対応し、オンデマンドの学習環境を広く提供していくことは使命であるとも言える。 いわゆる社会福祉だけでなく、経済、情報、経営、開発、心理などのさまざまな角度からそれぞれの専門性を踏まえて「人間の福祉」を見つめ、研究の推進・蓄積と社会・地域のネットワークを駆使して社会に貢献できる「人間福祉複合系」の大学づくりを目指す本学として、本取組を通じて新たな学習スタイルを構築していきたいと考える。
【資料4】@ 平成6年度〜16年度 資格取得実績 本学における養護学校教員免許取得者は、昭和39年度から平成16年度まで、第一級、第一種あわせて5,100名である。そのうち、平成2年度に改正された同第一種免許の取得者数は859名である。下表は、社会福祉関連の資格と教員免許取得者についてまとめたものである。
注1 保育士取得者数は、平成7年度に廃止になった女子短期大学部の数値を含む。 注2 社会福祉士国家試験の受験資格取得者、受験者、合格者数は、すべて現役生の数で、通信教育部を含む。 (カッコ内は通信教育部で内数) 注3 平成6年度〜10年度の社会福祉主事任用資格は社会福祉学部1部・2部の学位授与者数とした。
【資料4】A 平成6年度〜16年度 分野別就職実績 昭和28年の開学以来、本学卒業生は50,000名を越え、多くの人材が、教育、福祉、医療に携わっている。下表による累計では、53.3%が公務員・教育・医療・社会福祉分野に就職している。
注1 平成6年度、7年度は女子短期大学卒業生数を含む。 注2 平成16年度の数値は、平成17年5月10日現在。
3.取組内容と新規性・独創性について 本取組では、「オンデマンドコンテンツの開発」、「オンライン・ラーニング・コミュニティの形成」、「コミュニティ内の知識の活用」によるeラーニングプログラムを開発し、循環再生産型の学習スタイルを実現する(図1)。
図1 本取組の全体像 以下、構成要素ごとに記述を行う
@オンデマンドコンテンツの開発 養護学校教諭免許状取得に必要な科目をオンデマンドコンテンツ(インターネットを通じ必要に応じて画面上に取出せる教材)として開発する。コンテンツの作成にあたっては、基礎的な内容を着実におさえるとともに、本学卒業生で構成される社会福祉実習指導員(【資料5】)など、福祉の現場とのネットワークを最大限にいかし、現職者にも登場してもらい、実践的な内容とする。開発したコンテンツは、本学のLMS(Learning Management System)から正規講座として提供する。提供科目は、養護学校教諭免許状取得に必要な23単位のうち、実習科目を除くすべて(9科目20単位)とする。なお、本学のLMSは、通信教育部における全国の学生向けの学習環境「NFUオンライン」に、主に通学生向けの情報通信環境を統合した、通信通学融合の学習基盤システムである。 学生は本科目を選択して、通常の対面講義同様、単位を取得することができる。時間と場所に依存しないため、他学部・他学科や他大学からも選択しやすい講座となる。現職者に認められている免許法認定講習の科目としての開講も目指す。
【資料5】社会福祉実習指導の概況
平成17年度実習指導講師数(平成17年4月14日現在)
講師の職種
※その他は、NPO法人、病院勤務、大学教員、リハビリセンター勤務、元行政機関職員などである。
平成16年度実習概況
A現場と大学をつなぐオンライン・ラーニング・コミュニティの形成 本学で開発中のLMSには、様々な関係者をつなぎあわせるオンライン・ラーニング・コミュニティ(学習者が双方向的に情報交換できるネットワーク空間)を形成する機能(以下、「コミュニティ機能」という)を持たせる。コミュニティ機能には、BLOG(日記風の個人ホームページ。記事同士を相互にリンクできるなど個人をベースにした高度な情報共有が可能。)やソーシャルネットワーキングサービス(参加者が互いに紹介しあうなどして友人関係を広げることが可能)の要素を取入れ、参加者間のつながりを演出し、アクセスを促す仕組を盛り込む。さらに、本学で取組んできたバーチャルキャンパスやフォーラム運営の知見を基盤とし、コーディネータなど人的な支援体制の整備も適切に行う。 コミュニティには学生・教職員に加えて、NPOなど地域の支援者、実習施設などを巻き込み、人的ネットワークの深化と知識の共有を目指す。多忙などの理由から、福祉現場における実習受入は困難なことが多いのが実情であるが、恒常的な関係を築いて実習先と大学の相互理解を図り、双方にメリットとなる取組として位置づける。 コミュニティ自体はeラーニングプログラムではないが、ここに蓄積される知見(知識)、静止画・動画データなどをeラーニングコンテンツとして活用することにより、本取組のプログラム開発において、重要な役割を果たすことになる。また、コミュニティに蓄積される膨大なデータを処理して、ナレッジベースとして提供していく。
Bコミュニティ内の知識の活用 本取組では、知識・理解に加えて実践力を養うための一連のシステム・プログラムを整備する。実習時の状況の克明な記録や事前・事後学習時にも環境、特に3-Aに記述したコミュニティ機能を活用する。事前学習を行った学生は実習に出て、日々の記録をコミュニティ機能により日記風に、写真・動画なども取入れながらまとめていく。これらの記録をもとに、教員や実習関係者はきめ細かな指導を与える。学生は指導を踏まえて、自身の活動の振返り・まとめを行う。学生の試行錯誤・問題解決へのプロセスは、完成された知識の伝授とは別の、学生目線からの貴重なコンテンツであり、他の学生にとっても貴重な情報源である。本取組でも学生同士の実習事後の相互学習の題材とすると同時に、次年度以降の学生の事前学習のためのコンテンツとして活用していく。各種ノウハウ、言葉では説明しにくい事柄の動画・静止画などの学習素材については、コンテンツ作成部門による編集を加えた上で、eラーニングプログラムで活用可能なコンテンツとする。 こうした、いわば「循環再生産型の学習スタイル」は、実践力育成のために汎用的に成り立つモデルであると考える。本学においては、他分野の福祉人材育成にも取入れ、知識伝達を超えた実践力の育成を行っていく。応用分野のコンテンツのライフサイクルは短くメンテナンスコストが問題となる場合が多いが、「循環再生型」の学習スタイルを確立することで、時代に合致した有意義なコンテンツの継続的な提供を可能とする。 |