日本福祉大学

2007年度 事業計画

T.2007年度の位置と重点

 平成19(2007)年度は、大学入学定員と入学希望者が同数となる「全入時代」を迎える。すでに平成18(2006)年度定員割れ大学は、222大学、全大学の4割に達し、特に、ここ東海地区においては昨年33%だった定員割れ大学が、一気に50%となるなど急激にその厳しさを増している。こうした中、政府、文部科学省の規制緩和政策は、株式会社の大学経営の全国解禁や校地・校舎所有義務の撤廃も検討(日経新聞10月5日)されるなど、急速に自由化の方向に進んでいる。大学の設立、再編、特色化の動きはさらに激しさを増し、愛知県内を見ても、人間や子ども、教育に関連する学部新設・再編が急増しており、この分野の新たな競争の激化の中で、改めて本学の役割と真価が問われている。

 本学は歴史的な学園創立50周年事業の多彩な展開を通して、環境整備事業やエッセイコンテストをはじめとした記念事業を積極的に展開すると共に、教育・研究事業の充実の取り組みを進めてきた。こうした成果と到達を基礎に、文科省よりCOEや大学院イニシアティブ、今年さらに2つを追加した6つの特色GP、現代GP申請の採択を受け、その実績を社会的にも評価された。

 こうした到達を踏まえると共に、厳しい時代状況を切り開く確固とした学園アイデンティティーを確立することを目指し、大沢勝総長・理事長の提起に基づき、「21世紀学園ビジョン」が策定された。そこで定められた本学園の目指す基本目標は、以下の通りである。

(1)建学の理念を継承・発展させ、「人間福祉複合系」を目指す学園として、人間福祉に関する研究・教育・研修の内外リーディングセンターを構築する。

(2)ユニバーサル・アクセス時代に相応しい通信・通学融合の「生涯学習型ネットワークキャンパス」を全国に展開する。

(3)高い専門性と社会実践に基づく福祉文化を創成し、それを全国に普及する。

この基本目標並びに5つの事業骨格を実現すべく、学園戦略本部や企画委員会において、「学園ビジョンの具体化」、「新長期計画」や「短期計画」(平成18(2006)年度〜平成20(2008)年度)の策定と推進準備が進められている。
特に本学園の目指すべき方向と特色をいっそう鮮明にするため、平成19(2007)年度より全学的な学部再編に取り組む。情報社会科学部を高浜専門学校との共同によって健康科学部(仮称)に再編、社会福祉学部から子ども発達学部を、福祉経営学部から国際福祉開発学部をそれぞれ分離・独立して設置し、また経済学部を含む既設学部の抜本的な教育改革、通信教育部の社会的要請に対応した事業拡充、大学院博士後期課程の統合をはじめとする大学院改革など全学的な改革の計画化と推進をはかっている。

平成19(2007)年度は、この「21世紀学園ビジョン」およびその具体化構想に基づき「新長期計画」「短期計画」の実現に向けて取り組む年度である。そのため、年度の最重点として学部再編のための教育課程や教員人事編成、文部科学省等への届出・認可に万全を期すと共に、施設・設備の新設・整備や、抜本的に変わる学部構成や特色化された教育の広報による本学評価の向上に全力を挙げることが求められる。また、それを支える財政計画や人事上の改革、これらの推進をはかる安定的な経営体制、管理運営体制を検討・整備する年度でもある。

 本年度の重点課題を改めて整理すると、第1の課題は、この学部再編を計画通り実現することに全学を挙げて取り組むことにある。あわせて、この新学部を中心にした新たな日本福祉大学の姿を積極的に広め、厳しい学募環境の中で、広報活動、対外活動を強めることにより志願者を確保することが重点課題となる。そのためにも大学・学校評価の重要な指標となっている就職の率・水準の向上に明確な目標を持って前進をはかる。また、その源泉となる、学部再編で抜本的に整備される教育の特色化(カリキュラム、教育内容・方法)により、専門力量を持つ人材育成、学生・生徒満足度の向上に本格的な取り組みを開始する年度である。このための「全学教育開発機構」「学生生活総合支援機構」の設置をはじめとする諸改革を遅滞なく遂行すると共に、それらを支える教員人事制度上の改革、評価システムの確立等を推進する。また、本学の特色を形成する、オンデマンドも活用した通信・通学融合の「生涯学習型ネットワーク」の全国展開を目指した事業に取り組む。新たな動向に対応した介護人材養成や社会人(団塊世代など)を対象とする教育事業への本格参入も求められる。学部再編を期に、大学の社会連携諸活動をさらに総合的に推進する「福祉文化創成事業」の開始も重要な課題となる。また、学生徒募集が厳しい環境下にある専門学校、高校の改革も極めて重要となっており、新長期計画で検討されている改革方針に基づき、その着実な実行が求められる。
財政上も、学募をめぐる厳しい環境、高校を除く学費据え置き、新規事業での大きな増収要因はないなどの点から、全体として帰属収入の増加は期待できず、引き続き経費削減、人件費総枠の適正化が重要な課題となる。あわせて新長期計画財源の計画的蓄積と計画的な運用、新たに設定した基金「教育改革推進事業特定資産」「先導的研究開発事業特定資産」の蓄積と活用が重要課題となる。
経営上は、私立学校法改正にもとづき、事業計画、事業報告、財政公開、監査システムなどの充実を図り、厳しい経営環境の中で確実な改革推進をはかるためのマネジメントサイクルの一層の整備を進める。また、危機管理体制の強化も求められる。
以上の全体課題の実現を支える年次計画としての「中期経営政策」の策定も課題となる。
平成19(2007)年度は、学園の中長期の展望を作り出すと共に、直面する「全入時代」に対応する短期的改革を断行する、極めて重要な年度となる。

U.重点事業計画

(中期計画の策定)

○「21世紀学園ビジョン」及び「短期計画」の策定と短期計画事業の進展を踏まえ、平成21(2009)年度から創立60周年にあたる平成25(2013)年度までの中期の「構想」を検討する体制を確立し、「中期計画」策定のための検討・準備を開始する。

(短期計画の具体化)

○ 平成20(2008)年度からの大学学部・学科再編(2学部新設、既設学部改革)及び全学教育改革の始動にむけた文部科学省、厚生労働省等への届出・申請及び環境整備を含む開設準備を必要な体制も整備して滞りなく進める。

(大学教育改革)

○ 教育ビジョンに依拠して本格的に実施する初年次教育・キャリア形成・語学・情報・ゼミ教育などの「教育改革」の具体化を行い、「大学教育力」の格段の向上をはかる。平成20(2008)年度以降の学部・学科再編にともなう経過措置について遺漏なく実施できるようにする。

○科目精選とオンデマンド授業の推進をはかる。選定されたGPプログラムの着実な遂行と特別補助金を含めた新規獲得をめざす。

(学生支援)

○ 学生実態に見合った学生相談支援体制を強化するとともに、学生が安全・安心・安定して学生生活を送ることができるよう、環境整備、自主的活動条件整備等の改善・改革計画を策定・実施する。

(大学学生募集事業)

○ 平成20(2008)年度新設・改組学部の学生募集および既存学部の学生募集については教育改革を前面に打ち出した事業を行う。学募・広報事業体制を各学部に学生募集担当を配置し教職一体で推進するなど抜本的に強化し、平成20(2008)年度入学試験の学生募集水準を、対前年度の総合的な指標において大幅に前進させる。

(大学就職・キャリア開発事業)

○ 「新ふくしキャリア時代を生きる人材の養成」をめざして平成18(2006)年度に選定された「現代」GPを確実に実施する。全卒業生に占める進路決定者の割合を80%以上にするとともに各領域別の「優良」事業所と公務員への就職実績を増やす。

(大学通信教育部事業)

○教材のオンデマンド化を着実に推進するとともに、教職資格対応や大量定年退職者のニーズ対応など新たな領域の事業を具体化する。精神保健福祉士の資格対応、学生・実習生の増加に対応する学習・実習指導体制の整備、スクーリング会場の増加を遺漏なく進め、学生の安定的な確保をめざす。

(大学院事業)

○ 安定的な院生確保のための募集構造を全学でつくる。とりわけ社会福祉学研究科社会福祉学専攻および福祉マネジメント専攻についての検討を急ぐ。同時に、国際社会開発研究科については、「大学院イニシアティブ」での成果を活かせるよう具体化をはかる。
福祉社会開発研究科への博士課程統合と福祉経営・人間環境研究科への改組に万全を期す。通信と通学課程の融合を視野に入れた修士課程の統合を検討する。

(大学研究事業)

○ 21世紀COEプログラムの成果を活かし、グローバルCOEプログラム(ポスト「21世紀COEプログラム」)にチャレンジする万全の準備を進める。学術フロンティア事業を継続するため先導的研究開発事業特定資産の有効活用を行う。総合研究機構の組織改編など研究戦略を立案・推進する体制の検討と研究所の再編に着手する。

(国際交流事業)

○ 優秀な留学生確保のために、海外提携校(新規も含む)との制度的な整備を行う。
同時に、海外の教育・研究機関と連携した事業について調査・検討する。

(専門学校事業)

○ 高浜専門学校長期計画(大学学部との統合計画)の推進、中央福祉専門学校における福祉、介護、医療人材動向を踏まえた専門職養成高度化プランを提起する。両専門学校の既存学科における定員確保と教育改善を進める。

(付属高校)

○ コース制の導入をはじめとした「新教育体系」について、システムとしても、内実においても、確実な定着を図り、平成21(2009)年度以降の成果に結びつける。過渡期の対応に遺漏のないように努め、平成20(2008)年度からの大学改革に前進的に対応する。入学生徒数について経営指標を確保し、教学目標に挑戦する。

○ 具体的な事業として、3つのコース教育について運営体制を確立しながら軌道に乗せ、本格的なキャリア教育について正課授業を核に開始し、学力・進学力の確実な向上をはかり、生活指導の新たな展開をはかる。また、これらの教育改革を推進するために教員研修事業を活性化し、改革的で効率的な校務運営体制を確立する。

(社会連携等)

○ 福祉関連施策等社会動向に留意しつつ、福祉文化創成事業をはじめとするネットワーク事業を展開する。介護人材の育成等新たな人材養成事業に関わる計画を取りまとめるとともに、必要な体制の整備を行なう。

(支援組織)

○ 地域同窓会等の活性化や学部同窓生の組織化等に協力するとともに、同窓会事業とのより緊密な連携をはかる。大学後援会の事業と体制の充実をはかるべく、必要な支援を行なう。

(情報化事業)

○ 次期通信教育部システムの安定稼動・定着をはかるとともに、「学園基幹システム」(nfu.jpシステム、通信/通学/教学(教育・研究)/事務の統合システム)完成にむけた開発を業務改善と情報教育環境の整備も重視して推進する。現代GPや特色GPの進展および全学共通科目の拡充等の全学教育改革事業の実施と連動して、通信・通学共用のオンデマンド・コンテンツを開発し配信する。

(人事)

○ 職員新人事制度の改善を含めた運用の高度化と新給与制度への移行を行なう。 新長期計画事業を踏まえた教員人件費管理における管理指標の設定をはじめとする人事諸制度の整備と、役員制度改革(平成21(2009)年度実施目途)の検討を進める。

(業務)

○ マネジメントサイクルを前提とした内部統制システムの確立を目指し、監事ならびに内部監査制度等条件整備(諸規定、体制等)を行う。

(財務)

○ 厳しい経営環境の下、諸改革を進める初年度であり、新長期計画の総事業費管理と資金調達、新規事業の収益力の確保、再編を含む既存事業の収益力の維持・改善に取り組む。そのために、さらに財務運営力を高め、経営管理方式の整備をはかる。

(経営・教学体制)

○ 厳しい環境の中で新長期計画の推進をはかるための経営体制の整備、大学機構の改革をはじめとした管理運営、事務組織の整備を平成21(2009)年度にむけて段階的に進め、平成19(2007)年度は大学教学機関の再編とこれに対応した事務組織再編を行う。

V.予算の概要

予算書概表・予算説明 参照

以 上

CGI