現在、福岡県大牟田市の乳児院で「里親支援専門相談員」として活躍する星隈さん。地元の九州から愛知県の日本福祉大学へ進学し、心理学を専攻。その後、進路に悩みながらも思いもよらない“ご縁”によって現在の職場へ。星隈さんが抱いている仕事への想いや今後の展望などについてお話を伺いました。

様々な価値観にふれる

なぜ日本福祉大学へ進学しようと思ったのですか?

 高校生の頃にいろいろと思い悩む時期がありました。その頃から人の“心”に興味を持つようになり、心理学について学んでみたいと思うようになりました。でも、小学生の頃から海外のNGOなどの活動にも興味があったのでその両方のポイントで大学を探していました。そこで見つけたのが愛知県にある日本福祉大学でした。国際協力について学べる学部にもすごく惹かれましたが、高校の先生にも相談し、心理学を学べる学部に入学しました。

 学生生活を振り返ると、いろいろな人たちとの出会いによって様々な価値観にふれることができたことは私の財産です。特に、ゼミの先生との面談によって、自分自身を客観的に見ることができるようになったことは、この先対人援助の仕事をすることになる私の人生においてとても重要なポイントだったと感じています。

将来の目標が見いだせず…

現在の就職先はどのようにして決めたのですか?

 大学関係の方や後輩もこの記事を見ることになると思うと大変言いづらいのですが…。当時、将来の目標を見出すことができず、就職活動はほとんどしていませんでした。しかし、漠然と海外に行きたいという気持ちだけはあったので、アルバイトをして貯めたお金でしばらく旅に出たりしていました。

友人と海外へ
スリランカでの旅の様子
ヨルダンでの旅の様子

 それでも日本で働く経験も大事だと考え、卒業した年の8月に日本福祉大学の福岡オフィスへ就職相談に行きました。そこで紹介していただいた就職フェアに行った際、現在の職場である甘木山学園のブースへ。そのとき窓口をしていた方が現在の私の上司であり、日本福祉大学卒業生の大橋さんでした。子どもの心理や発達に関心があったので、児童養護施設や乳児院がある現在の職場に決めました。不思議と迷いは一切なかったですね。

 本日、取材に来ていただき、改めて日本福祉大学のご縁に感謝しています。

就職フェアを紹介した福岡オフィスの境さん(左)
甘木山学園の就職ブースで当時窓口を担当していた大橋さん(右)
※全員日本福祉大学卒業生

仕事に変化を加え、理解を深める

現在の仕事内容と将来の展望をお聞かせください。

 私は現在、甘木山乳児院で里親支援専門相談員として働いています。乳児院とは、様々な事情によって保護者との生活が困難な乳児を保護し、養育する施設です。

 私は入職から昨年度(2021年度)までケアワーカーとして、こどもたちの日常生活のサポートを行っていました。今年度(2022年度)からは里親支援専門相談員として、里親委託に向けた里親とこどもとの交流のサポート、里親委託後の里親や里子の支援、里親支援における広報活動や関係機関との協働にかかわる業務を担っています。担当したばかりで分からないこともまだまだたくさんありますが、里親さんにも助けてもらいながら、目の前にいるこどもたちのために今の仕事を一生懸命取り組みたいと思っています。

 その為にはやはり“学ぶこと”が大切だと思っています。こどもたちのことを考えて仕事をするなかで、「本当にこの対応でよかったのかな?」、「このままでいいのかな?」など、現場にいると正解が分からず不安になることがたくさんあります。しかし、研修を受けることで、「この対応でよかったんだな」、「次は違う方法でアプローチしてみよう」など、日々の仕事に変化を加え、理解を深めることができると思っています。

 毎日が悩みの連続ですが、感覚だけでなく、根拠のある知識もしっかりと身につけていきたいと思っています。将来的には、児童分野にかかわる領域をより深く学ぶため、海外の福祉にも触れてみたいと考えています。

ワクワクするかどうか

後輩へのメッセージをお伝えください。

 私は自分に自信が持てず、すごく悩んだ時期がありました。もし、今後の進路に迷っている…。明確にやりたいことが見つからない…。でも何かしたい…。と思っている人がいたら、まずはやってみて、違ったらやめよう。くらいの感覚で勇気を出して一歩踏み出してみてください。私は「ワクワクするかどうか」が選択の基準でした。今でもやりたいことをずっと探している気がします。一歩踏み出した先の様々な出会いや学びを経て、また違う一歩を踏み出す。この繰り返しをしてきた結果、私が大事にしてきた軸が何となく見つかってきたように感じています。

 それは、「生きづらいと思っている人に寄り添って、ともに歩むこと」なのかなと。その人の“ために”ではなく、“ともに”ということが私の人生で大切にしていきたいキーワードです。

 視野を拡げ、人との出会いによって様々な価値観にふれること。その過程を歩んでいく中で自分自身の可能性を拡げることに繋がるのではないかなと思います。

取材後記

 この度取材させていただくことになったのは、本学が事務局を務める講座に星隈さんが受講生として参加されたことがきっかけです。里親支援に関連した“協働”をキーワードに、事例検討を通じて実際にアクションを起こすことを目的とした講座です。

 「人にはいろいろな生き方がある」ということを自身の経験や様々な人との出会いによって気づかされたと話す星隈さん。乳児院や児童養護施設等で育ったこどもたちも、そうでないこどもたちも、自分自身を肯定して生きていけるような社会になって欲しいと願い、その一助となるために学び続ける星隈さんをこれからも応援していきたいと思います。

社会福祉法人 甘木山学園 甘木山乳児院
里親支援専門相談員(社会福祉士)

星隈 陽さん

AKI HOSHIKUMA

  • 日本福祉大学 子ども発達学部 心理臨床学科 2014年卒業
    (現在の教育・心理学部 心理学科)
  • 福岡県出身

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<取材:福岡オフィス>