私たちは、あたりまえのように大学へ進学するけど、障害のある子たちの将来は?

その声に応える 日福の学び

知的障害のある子どもたちが、ゆっくりと将来を考える時間をつくりたい。

知的障害のある子が、特別支援学校の高等部を終えて進学する率は、わずか0.5%です。毎年、50%以上の人たちが大学へ進学することを思うと、その格差は100倍です。なぜなのか? 一つには、受け入れ先が少ないこと。高等部などに設置される「専攻科」が、主にその役割を担っていますが、全国で知的障害者を受け入れている専攻科は、たった9校しかありません。これが現実です。多くの特別支援学校では、「就職させなければならない」という意識が根強く、保護者もまた、それを望む傾向があります。しかし、知的障害のある子どもたちにとって、高校生のときに就職へと追い立てられるという状況は、あまりにも過酷だと思います。おとなしく言うことを聞いていた子どもたちが、就職後離職したり、精神的に崩れていくというケースはとても多いのです。私は彼らが、「働くこと」「自分に合った仕事」などについて考えるのにもっと時間をかけてもよいのでは、と思います。知的障害者が高等部卒業後すぐ就職するのが当たり前ではなく、ゆっくりと教育を受けながら自らの将来を考える時間を保障するべきなのです。

子ども発達学部 心理臨床学科障害児心理専修伊藤 修毅 准教授

特別支援学校を卒業した知的障害のある青年の進路は
通常の高等学校卒業生と大きく異なります。

1つ目の円グラフは、高等学校卒業生の進路状況を調査したものです。もう1つの円グラフは、知的障害特別支援学校高等部卒業生の進路状況を調査したものです。進学(大学や短大)または教育訓練機関(専門学校や職業訓練校)に進み、「学び」を継続する人は、通常の高校卒業生では4分の3以上いるのに対し、知的障害特別支援学校卒業生ではわずか2%です。
知的障害特別支援学校卒業生で企業等に就労している人の比率は、通常の高校卒業生の2倍近くに達します。また、知的障害特別支援学校卒業生の多くは「社会福祉施設等入所・通所者」となっていますが、これは、いわゆる「作業所」と呼ばれる働く場がほとんどです。作業所での平均賃金は月に2万円程度で、企業等で働く場合との格差も深刻です。

高等学校(全日制・定時制)卒業者の進路(1,047,392名)

データ出典:文部科学省「学校基本調査(平成26年度)」より

知的障害特別支援学校高等部[本科]卒業生の進路(16,566名)

データ出典:文部科学省「特別支援教育資料(平成26年度)」より

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「障害者」という人ではない、たまたまその人は障害をもっていたということ。「障害者」という人ではない、たまたまその人は障害をもっていたということ。

肢体不自由児を想定した授業づくり

伊藤先生は、障害児教育を志す学生でさえ「障害」についてきちんと理解している学生は少ない、と感じている。私たちは、障害児とか障害者と言うが、英語ではa person with disabilitiesと表現する。つまり、「人格person」を認めたうえで「障害disabilities」をもつ人と考える。つまり、まず一人の人格ありき、だと考える。障害をもつ子どもの教育を考える時、変なテクニックを弄したり、マニュアルに頼るのではなく、目の前にいる子どもから出発して子どもを理解し、子どものための「教育」を集団で考えていく。先生はその姿勢にこだわり続けている。

Profile

ITO,Naoki
伊藤 修毅(イトウ ナオキ)
准教授
博士(社会学:立命館大学)
修士(教育学)

東京国際大学教養学部卒業(1998)
奈良教育大学大学院教育学研究科修了(2009)
立命館大学大学院社会学研究科修了(2012)
北海道立高等養護学校教諭(1998~2007)
日本福祉大学赴任(2012)