私の住む小さな町にソフトバレーボール大会がある。私のチームは「オヤジハピネッツ」通称「オヤジ」といい、毎年出場して優勝を目指している。だが毎年いい所まで行っても最後は勝てない。優勝しているのは七十代のおじいさん、おばあさんが居るチームなのだ。われら「オヤジ」は他のチームより平均年齢が二十歳以上若く、パワーも体力もある。誰が見ても優勝してもおかしくないチームのはずだ。声掛けもしているし励ましの言葉も言い合っている。けれども勝てない。では一体何が違うのだろうか。 年配チームには確かに技術がある。でももっと大事なものを持っている。それは笑顔だ。我ら「オヤジ」はミスがあっても確かに笑顔ではいるが、作り笑顔だとわかる。そして次第に笑顔がなくなり、掛け声もなくなってしまう。けれども年配チームは、ミスしても「仕方ない、今のは取れないよ、次取ればいいよ」などミスを責める発言、態度は一つもない。やはり彼らは人生の経験値が違うのだ。色んな人と接しているから、人の気持ち、気持ちの上げ方が分かっている。 もちろん大会だから勝ちたい、優勝したいという気持ちはどのチームも強い。けれどもその気持ちの強さが敗因になってしまうこともある。勝ちたい思いで「自分が自分が」と自己中心的になり、ミスにつながる。世の中でさまざまな問題が起こっているが、原因の一つはこれではないか。人に対する感情一つでその人を生かすこともあればその人を殺してしまうこともある。 では、まだまだ人生の経験値が低い私たちは、相手を生かすためにどう接したらいいのだろうか。それは相手を大切にし、尊重することだ。当たり前のようだがそれができた時初めて優勝が見えるはずだ。これからの人生にも役に立つことを、私はスポーツから学んだ。
「平均年齢が二十歳以上若く、パワーも体力もある」作者が入っているオヤジチームではなく、「七十代のおじいさん、おばあさんが居るチーム」が優勝してしまう話がユーモラスに書いてあり、楽しく読むことができました。 「技術」より、もっと大切なのは「笑顔」だという視点の面白さと、作者が所属するオヤジチームが優勝できない理由を、作者なりに見つめて素直にまとめています。そうした読みやすい構成をエッセイらしいと評価し、審査員特別賞に選びました。