36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第15回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかでつながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
優秀賞 四十「人」で飛ぶ
神奈川県立上溝高等学校 2年 伊藤 美珠希

 「せーの!!」
 中学の体育祭で行われる大縄大会で優勝するため、太陽がギラギラと照りつける中、一年五組の声が響いた。
 私たちのクラスには発達障害をもち、足が不自由であるマー君がいた。マー君は日かげで応援するようにこちらを見ていたが、その表情は少し寂しそうにも見えた。
 だんだんと本番が迫る中、一人の男子が突然みんなを集めると、強い眼差しでこう言った。
 「このクラスは四十人いて一年五組だから、マー君も一緒に全員で飛びたい」
 その瞬間、私もそう思っていたよ、と笑顔で答える子もいれば、正直優勝が遠のくのではないか、と不安な顔を浮かべる子もいた。中学生になって初めての体育祭…大縄大会で一番大切なことは何だろう…。私の頭の中では「優勝」と「友情」の二語がぐるぐる回っていた。その時自分の答えはハッキリしないまま、マー君は担任の先生がおぶって全員で飛ぶことになった。心配したとおり記録は伸びなくなってしまった。だがそれと同時に変わったのは、みんなの表情と気持ちだった。マー君が加わることでみんなは手をさしのべ、声をかけ合った。誰を見ても真剣で、ギラギラ太陽に負けないくらいの笑顔がまぶしかった。マー君のおかげで、気づけば一年五組は一つの輪のようにつながっていた。
 「ただいまの結果…優勝は一年五組です」
 パッと何かがはじけたように、みんなの顔に笑顔があふれた。あの時答えがハッキリしなかったのは、きっと私が「障がい」に対して何か壁を感じてしまっていたからだ。でも実際、「障がい」をもっていようがいまいが、みんな同じ「人」であり、壁などなかった。一年五組はマー君と一緒に全員で「優勝」と「友情」を掴み取ったのだ。あの時の四十人の声が今でも響く…。
 「せーの!!」

講評

 起承転結が、実によくまとまっていることや、作者が実際に体験したことを通して自分の気持ちを素直に表現している点を高く評価しました。まさに、エッセイと呼べる作品です。
 大縄大会の様子だけでなく、作者とクラスメイトの心の動きや迷いがしっかり書いてあり、テンポ良く話が進んでいくため、エッセイの書き出しから最後まで、一気に読むことができました。読んでいると目の前に映像が浮かび、音を感じます。そんなわかりやすく、読みやすい文章になっている点も、この作品の魅力を高めています。

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