36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2017年度 日本福祉大学
第15回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかでつながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

今年で15回目を迎えたエッセイコンテスト。昨年より600点以上応募数が増え、個人応募の中にも優れた作品が多く、今年は例年以上に議論が白熱しました。そんな審査会で感じたことを、審査員の皆さんに話していただきました。

審査員プロフィール

「最後の3行」に気を配ることが大切。
児玉 今年の応募総数は9200点を超え、昨年より600点以上増えました。特に第2分野が大幅に増えたのは、昨年リオオリンピック・パラリンピックがあり、本学に「スポーツ科学部」が開設されたことも影響しているかもしれません。

川名 今年は個人応募作品数が前年より増え、しかも優れた作品が多かったことが大きな特徴だと思います。次回も個人応募で良い作品が出てくることを期待しています。

角野 エッセイコンテストが始まった頃は、「自分の考えを入れなければいけない」と考えて、肩に力が入った作品が多かったですが、最近は柔らかくなってきました。これも、エッセイコンテストを続けてきた成果でしょうね。

金澤 私は昨年からエッセイを読ませていただきましたが、「高校生って、こんなに優しいのね」と思いました。多くの作品を読めるのが楽しかったです。

川名 今回の審査会で議論の対象になったことが、文字数でした。募集要項では「800字以内」となっていますが、これをどうとらえるかに差があったようです。

久野 400字詰め原稿用紙に書いた作品は、原稿用紙2枚に収めることと解釈しますが、ワープロを使った作品では文字数を調べた時に「800字以内」に収まっていても、400字原稿用紙に書き直すと改行の関係で2枚を超えてしまうこともありますからね。

児玉 これは来年に向けた課題として、事務局で検討したいと思います。

角野 文量では逆に何行も余っている作品があり、もう数行埋めればいいのにと思いました。

原田 でも、そのために背伸びして無理矢理まとめを書いてしまい、「最後の3行がなければいいのに」と思う作品も多かったように感じます。

杉山 「最後の3行」は毎年感じることですね。コンテストと聞くと、どうしても構えてしまいがちです。もう少し肩の力を抜いて、身近なことに目を向け、そこを掘り下げてまとめてもらうと良いのでは。どうしても最後に締めくくりを持ってこようと考えるから、最後の3行が浮いてしまいます。大上段に振りかぶらず、肩の力を抜いて書いてください。

板垣 書いた後に何度も読み返して推敲することも大事です。そうすれば文字数の調整もできるでしょうから。また、作品を読んでいて気になったのが、段落を作らず改行がない作品が多いこと。段落に分けて、それぞれの段落でどのようなことを言うか考えながら文章を組み立てていけば、テンポ感のあるエッセイに仕上がります。

審査員によって評価のポイントが異なる。
金澤  私は今回初めて審査会に参加したのですが、審査員の評価のポイントが皆さん違い、ある作品では「この表現が面白い」と推す審査員もいれば、「私はこういう表現は好きではない」とおっしゃる審査員もいて、意見が分かれることがありました。審査は難しいですね。

久野 審査員の専門分野が違いますから、その差もあるでしょう。「人とのつながり」に興味がある審査員もいれば、スポーツに詳しい審査員もいますし、私は仕事柄、国際関係を扱った第3分野、第4分野の作品を読む時に力が入ります。

杉山 昨年も「エッセイとは何ぞや?」と申しましたが、分野にもよりますが、理屈っぽい作品やミニ論文のような作品がいくつか見受けられました。「エッセイコンテスト」ですから、起承転結がしっかりあり、自分の体験を基にして、作者が感じたことをしっかり書いた作品を、私は評価しました。

角野 今年の第1分野は障がい者との関係を取り上げた作品が多く、エッセイというより自分の考えを主張する論文に近い作品が目に付きました。「エッセイ」と「論文」の違いを学ぶことで、さらにもっと良い作品になるのではないでしょうか。

児玉 私は、多くの人に考えてほしい大事なテーマを取り上げていることを評価のポイントにしました。作者にしか書けないことを素直に表現したエッセイに好感を持ちます。

原田 タイトルは大切ですね。タイトルが独創的で面白いと評価が高くなりますし、タイトルが良くなくて、「惜しいなぁ」と思う作品もありました。

板垣 出だしも重要です。文章の入り方が良いと、「この先、どうなるのだろう?」と身を乗り出して読んでしまいます。

川名 感動的な作品にまとめようと思うからか、「きれいにまとめすぎ」とか、「これ、本当に体験したのだろうか?」と疑いたくなるような作品もありました。

角野 結果や事実だけ書くのではなく、なぜそうなったのかという理由をきちんと書くと、もっとリアリティが出るのにと思う作品も見受けられましたね。文字数の制限はありますが、読者が状況を思い浮かべられるよう理解しやすい説明を書くことが大切です。

視野を世界に広げてほしい。
児玉  来年応募する皆さんへの期待があれば、お聞かせください。

川名 第3・第4分野は、もう少し社会に関心を持って、日本だけでなく、世界で起こっていることに目を向けてほしいですね。もう少し視野を広げてください。

久野 第1・第2分野は、日常の小さな出来事でもいいと思います。自分が経験したことから「何か」をしっかり読み取って、文章にまとめてください。第3・第4分野は、しっかり考えることが大切です。日本や世界では3・11(東日本大震災)、9・11(アメリカの同時多発テロ)、7・26(相模原障がい者施設殺傷事件)といった大きな事件が起きていますから、そうしたテーマに挑戦して第4分野に出す高校生がいれば、少しくらい文章が粗くても、評価して受け止めたいと思います。

角野 テーマの選び方は重要ですね。もっと若者らしいテーマを選んでほしいと感じた作品もありました。そして、もう少し自分らしさにこだわってほしいと思います。世の中で言われていることと、自分の意見を比較して、「自分ならこう思う、自分ならこうする」という文章にすると、もう少し変化がある作品が生まれるでしょう。自分のいる場所で、まわりをよく見てみることから始めてみてください。そこで感じたことを表現するという練習をしてください。

原田 学校でエッセイの書き方や小論文の書き方を学んでいると思いますが、エッセイも小論文を書くイメージで書いているように感じられます。「自分ならこうする」「こう考える」と身構えず、素直に書くと、自分らしさが伝わると思います。また、会話文が魅力的だと読んでいて楽しく、高い評価になります。きれいに整えた言葉より、生っぽい言葉を書いた方が文章に変化が出て、いいと思います。

杉山 高校生が普段使っている言葉かもしれませんが、作品に使う時はもう少し考えて言葉選びをしてほしいと思うことが毎年あります。攻撃的な言葉は読後感を悪くするので、使わない方が良いですね。そして、これまでの年は「文句なしでこれ」という頭一つ抜けた作品があったのですが、今年はそうした作品がなく、議論が分かれましたね。

板垣 昨年までは事前審査で各審査員が軒並み高い評価を付けた作品が文句なしに最優秀賞に選ばれることが多かったのですが、今年は事前審査で平均的に点数が高い作品ではなく、好き嫌いは分かれるけど、魅力的な作品の方が最終的に最優秀賞や優秀賞に選ばれた分野もあります。粗削りで好き嫌いは分かれても、読む人に圧倒的な感銘を与える作品を読みたいと思います。「36℃の言葉」とあるように、借りてきた言葉や背伸びした難しい言葉を使うのではなく、その人ならではの体温を感じられるような視点・表現に期待しています。

金澤 私は今年審査会に初めて参加して、審査員の皆さんが私とは違う様々な視点で作品を読んでいらっしゃることを知りました。この経験を活かして、来年も素晴らしい作品に出会えることを期待しています。

児玉 私も同感です。4つの分野ごとに特徴がありますし、自分がアクションを起こした経験を書いた作品と、「ここがおかしい」と考えた作品を同列で審査することの難しさを感じました。本日皆さんから出していただいたご意見を参考に、応募してもらう分野の工夫、文字数のルールなど、今後の検討課題とし、来年以降につなげていきたいと思います。皆さん、本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。
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