36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツと わたし
第3分野 日常のなかで つながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第3分野 日常のなかで つながる世界
優秀賞 ダブル
盈進高等学校 一年  重政 優

 「ハーフ」と言われ続けてきた。肌は少し黒っぽい。私は、日本人の父とフィリピン人の母を持つ。からかわれたことが何度かあった。「ガイコクジン」。「汚い」。それを思い出すと、今でもすぐに涙がこぼれる。

 「友だちのお母さんは日本人。いいな。私のお母さんはフィリピン人。嫌だな」。そう思って、小学校のときは、「ガイコクジン」のお母さんに学校に来てほしくなかった。それが広く知れわたり、これ以上傷つけられ、苦しめられる自分を想像すると怖かった。

 「参観日、来なくていいから」。ある日、私は母に言った。「そう…」。母が寂しそうな顔で小さくつぶやいたことを思い出すと胸が痛い。

 日本で生まれ育った私は、母の母国語のタガログ語は少ししか話せない。母は、タガログ語をはじめ、スペイン語、英語、日本語を話すから、私の家では多言語が飛び交っている。私は中学一年の時に、韓国文化に興味を持ち、自ら韓国語を学んだ。インターネットで韓国人の友だちを得て、毎日、韓国語で会話を楽しんだ。韓国に行ったことは一度もない。だが、今では日常会話なら、韓国語を使いこなせる。

 ある日、学校の先生が、韓国人のお祖父さんと韓国語で楽しく会話をする私にこう言った。「生き生きしてるね。家が多言語であふれているから、自然に外国語が体に染み込んでくるんだろうね。ダブルは違う」。

 ダブル。新鮮で心地よかった。二分の一+二分の一=一ではなく、一+一=二。つまり二倍。私は私でいいのだ。

 いま、私は考える。私と同じように肌の色が違ったり、宗教や性別、習慣が違ったりして、悲しい思いをしている人は世界中にたくさんいる。生まれや見た目、国籍などを理由にした差別。あってはならない。だから私は、誰もが認められ、尊重し合える社会の実現に力を尽くしたい。それは、誰もができる、誰もがやらなければならないこと。でも、ダブルの私が誰よりも心を砕いてやれることなのだ。

講評

 最近は少しずつ広がっているようですが、「ハーフ」ではなく、「ダブル」という響きが審査員には新鮮に感じられました。そういう印象的な言葉が題名になっており、題名を読むだけで本文に対する期待が高まり、その期待を裏切らないエッセイに仕上がっています。他人から聞いた話ではなく、当事者の言葉や体験、感じたことですから、文章に説得力があります。ダブルである作者に、この考えをいつまでも忘れず、頑張ってほしいという応援の気持ちを込めて優秀賞を贈ります。

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