36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2016年度 日本福祉大学
第14回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツと わたし
第3分野 日常のなかで つながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第3分野 日常のなかで つながる世界
最優秀賞 言葉でつながる
昭和女子大学附属昭和高等学校  三年 藤守 麗

 高校一年生の夏から、ドイツの高校へ一年間留学していた。なんとか拙いドイツ語を上達させてドイツ人の友達を増やしたい。そこで友人が勧めてくれたのが、語学パートナーを作ることだった。日本語を学びたいパートナー募集の旨を掲示板に書くと、翌日には応募者がいた。

 待ち合わせ場所に向かうと、そこにいたのは典型的 な「アニオタ」。名前はレベッカ。とりあえず次の約束をとりつけその日は別れる。

 別の友人とレベッカの話になると、彼女は不穏な顔つきをした。レベッカにはアスペルガーという障害があり、学年でも浮いた存在なのだという。そんな彼女とドイツ語の拙い私が語学パートナーを組んでもうまくいかない、と彼女は言った。

 私は結論を出せないまま、レベッカとの最初の授業の日を迎えてしまった。対人障害があると知っただけで、前回よりも対話が難しくなった気がした。やはり、断ろうか。その時彼女が言った。

 「初対面の人には必ず言うんだけど私はアスペルガーなの。だから、言葉の微妙なニュアンスが汲み取れない。はっきり物事を伝えて」。

 彼女は自分の障害を理解しそれを乗り越えようとしていた。それを知った瞬間、私の心から迷いが消えた。もともとドイツ語のできない私に言葉の微妙なニュアンスなんてできやしない。私たちの全力直球キャッチボールが始まった。週一回二時間であるはずの授業が、私たちの過ごす時間はどんどん長くなっていった。そうして、彼女は私にとってかけがえのない存在になった。国も障害も関係ない。お互いに乗り越えようとすれば、分かり合える。その乗り越える気持ちをくれたのはレベッカだった。

 私が日本へ帰国する前日、彼女が手紙をくれた。それは、私が教えた日本語で書かれていた。そして、私も彼女へ手紙を渡した。それは、レベッカが教えてくれたドイツ語で書いたものだった。私たちはいつでも互いの言葉で結ばれている。

講評

 友人から「レベッカには障害があり、学年でも浮いた存在だ」と聞いて、実際に会うまでは不安で、ドキドキしていたが、接していくうちに不安が消え、かけがえのない存在になっていく気持ちの動きが素直に表現されています。「私たちの全力直球キャッチボール」という表現に、一心不乱に頑張った作者の気持ちがよく表れており、好感を持ちました。その時の体験だけに終わらず、今も手紙のやりとりが続いている関係が素晴らしいですね。これからもぜひ、続けてください。

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