36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
審査員特別賞 ムグンファへの誓い
盈進高等学校/1年 橋 和

 私が朝鮮人だったら…
 「日本からでていけ!首を吊れ!八つ裂きだ!」。耳を塞ぎたくなる言葉が飛び交うヘイトスピーチとデモ。許せない。恐い。
 広島平和公園内にある韓国人慰霊碑。私はいつも、他県の仲間をガイドする。そばには、韓国国花ムグンファが咲く。
 「死者は亀の背に乗り昇天する」。韓国の故事にならって、慰霊碑は、どっしりと大きな亀の背中に乗っている。亀は目を見開いて故郷・朝鮮半島の方角を向く。
 一九四五年八月六日朝、あの日。日本の植民地支配によって、土地や職を奪われた多くの朝鮮人が、職を求めて日本に渡らざるを得ず、広島にも、「日本人」として移り住んでいた。当時、広島市内には、数万人にのぼる朝鮮人がいて被爆したといわれている。
 被爆後、生き延びた彼らは、日本人と同じく痛みと苦しみに耐え、救護所に向かった。だが、「朝鮮人は後だ」と言われ、多くの朝鮮人が命を落としたという。「原爆はすべてを焼き尽くしたが、差別の二文字だけは残った」。広島県朝鮮人被爆者協議会の李実根会長の言葉が、私に「あの日」を想像させ、あまりに悲しい歴史を突きつける。
  近年、日本と韓国は歴史認識をめぐりぎくしゃくしている。北朝鮮との関係も核開発や拉致問題も含めて不安定だ。それを背景に、「嫌韓」という文字が広まり、朝鮮人に対し、嫌悪・憎悪などの感情を激しくあらわす。
 ヘイトスピーチ。現在、それを取り締まる法さえない日本で、恐怖をともない暴力化している、と感じるのは私だけだろうか。もはや「憎悪表現」などと呼べない卑劣な差別。
 平和に国境はいらない。私は朝鮮半島と日本をつなぐ架け橋になりたい。そして、「韓国人慰霊碑」が将来、「朝鮮半島の人々の慰霊碑」となることを願う。私たちの日本が犯した過ちを後世に伝えるためにも。そして、国籍を問わず、誰もが信じ合い、愛し合い、平和をつくるためにも。そう思うとムグンファの薄紫があまりに美しく見えた。

講評

 「ヘイトスピーチ」という最近話題になっている大きなテーマを、自分自身に引きつけて考えて書かれた作品です。その思考の過程が、読み手にも伝わる書き方になっている点を評価しました。タイトルにある「ムグンファ」が最後の締めの文章に登場することで鮮やかな印象が残り、この花に込められた意味や韓国国花である理由を知りたくなります。第3分野にふさわしいエッセイとして、審査員特別賞に選出しました。

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