来年から、十八歳以上になれば高校生であっても選挙権が与えられることになった。そのとき、わたしは、資源循環型社会の推進に熱意をもっている政治家に、一票を投じたい。 「日本は最高!」「尊敬すべき行動だ。わたしたちも学ばなければならない」と世界から称賛されたのは、十四年のサッカーワールドカップのブラジル大会でのことだ。日本人のサポーターが会場のごみ拾いをしたためだ。しかし、このニュースをわたしは素直に喜べなかった。わたしはボランティアサークル部の活動で、車道脇のごみを拾っている。それなのに、次の活動日になるとごみのポイ捨てがある。元の木阿弥にはがっかりだ。 ごみといっても、原料は、石油や木であり、日本には少ない重要な資源だ。ごみも分別すれば立派な資源となる。ごみ問題は、ごみを拾うという個人の小さな善意だけでは解決できない、大きな問題に思えてきた。 ごみ減量による資源循環型社会の形成は、わたしたちが地球一つ分の資源で生きていくために、急がなければならない課題だ。例えば、八戸地方の南部裂織は、使い古しの布を細く裂いて織り込み、これを横糸にし衣服やこたつ掛けなどに再生した織物である。農閑期の女性の手作業は素朴で色あいが美しい。最近では、デニム生地のペンケースなど新感覚の製品も作られている。毎年三月末に日本中から出る膨大な量の不要な制服も、回収すれば反毛材料として再利用できるはずだ。しかし、日本の古繊維業界はほとんどが小さな事業所で手作業が多い。そのため、アジアの新興工業国との価格競争にさらされている。全繊維製品のうち、回収されるものはわずかに一割程度で、正に「使い捨て社会」である。 廃棄物を削減するため、繊維製品の再資源化を義務付ける法律「繊維製品リサイクル法」を制定できるのは、政治家だけである。わたしの一票で、豊かな地球を未来に残し、世界に誇れる日本にしたい。
18歳で選挙権を与えられることになったのをきっかけとして、自分の周りの社会について考えるようになった作者。一般的な概念で終わらず、故郷の産業である南部裂織の知恵に注目して、循環型社会に変えていきたいという具体的な提言を書いている点で、他の同様の作品から抜きん出ていました。制服の再利用など、身近なもので今すぐ実現しそうな、面白い提案だと思います。このエッセイを書いたことをきっかけに、ボランティア活動から、また、ぜひ次の行動を起こして欲しいと応援の気持ちを込めて、最優秀賞を贈りました。