36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
審査員特別賞 やすみっこ―方言から広げて―
青森県立八戸西高等学校 二年 川原 皐

 「やすみっこにするべ」
 そんな母の声でみんなは作業をしていた手を止めて、木陰に集まるのだ。『やすみっこ』というこの言葉は私の地域では農作業の途中で、休憩の時に食べるおやつやその休憩自体のことを言う。家族やお手伝いさんが笑顔で楽しい話をして、体を休ませる大切な時間である。ほんわかしていながらも、にぎやかなこの時間が私はとても好きだ。その言葉について、ふと私は思うのだ。もし、この言葉、方言がなくて、
 「休憩にしましょう」
 と言われても、私はそれに温かみを感じられない。何だか堅い印象だ。
 なぜこんなに方言に温かみ・安心感を感じるのか。私の育った地域は、ある意味通訳をしなければ分からないお年寄りや大人の人もいるくらいなまりが強い。その中で、生まれて育てられてきた私には、その言葉が使い慣れているふとんのようにしっくりとくるのだ。また、それがずっと昔からこの土地に住んできた人たちから受け継がれてきたものであり、風土を感じられる素敵なものだと誇りに思う。
 このことから仮に、日本人みんながみんな同じ標準語を使っていたら、もし世界中の人が同じ英語を話していたら……。私はなんてつまらない世界だと思う。相手に何の興味も湧かないのだ。違う文化、違う言語があるから、好奇心から人々は交流を持って世界はつながってきたのだ、と私は思う。さらにこのことは、人間関係にも言えるのではないだろうか。相手が自分とは違う人間であるから、その人とつながりたいと思うのではないか。でもそれを曲がってとらえて、ひがみのようにとらえるからゆがんでくるのだ。だから、相手のことをもっと大事にしていけば、もっといい関係を築けるし、世界は深く広くなって見えてくると思う。

講評

 作者の身近で日常的に使われる「やすみっこ」という言葉に注目して、読者の印象に残るエッセイにまとめています。方言という日本的な話から始まって、「違う文化、違う言語があるから、好奇心から人々は交流を持って世界はつながってきたのだ」と、話を世界に広げていく展開がユニークで面白いと思います。自分の言葉で、自分の思いを素直に表現している点もいいですね。そうしたところが評価されて、審査員特別賞に選ばれました。作者が日頃から方言や、ちょっとした言葉を大切にしている優しい気持ちが文面から伝わってきます。

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